地方の人口減少は深刻、これから納税者は激減する

公務員の給与は、俸給表に従って、基本的に毎年少しずつ上がっていく。月給据え置きと言ってもこれは全体平均の話で、個人個人は昇進していくから俸給表の位置づけが上がる人が多い。これは業務の成果というよりも、勤続年数で決まっていく。基本的に俸給表での級号が下がることはないから、定年まで上昇していく。ここが民間との一番の違いだろう。

最近の民間企業は50歳くらいで年収のピークを迎え、その後は役員にでもならなければ給与は増えないという会社も少なくない。働きに応じた年俸制が取り入れられている会社も増えた。高度経済成長期ならいざしらず、人件費が年々膨らんでいく仕組みには、民間は耐えられないわけだ。

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県庁も改革派の知事が就任すると、人事制度改革に乗り出す。なかなか職員の本給には手をつけられないから、職員の採用を抑えたり、非常勤職員で補って、全体の人件費を抑えようとしている。だが、それも今のままでは限界を迎えるところが多い。なぜなら、地方ほど人口減少が深刻で、10年後の納税者が激減することが分かっている県がほとんどなのだ。職員の人件費の重さが納税者の目に明らかになれば、早晩、大リストラをせざるを得なくなる。

地方自治体に問われる「定年」制度の運用

だが、国も地方も、人事制度の抜本的な見直しにはなかなか手をつけない。「働き方改革」の名の下に、職員にプラスになる待遇改善には力を入れるが、職員に厳しい改革は誰もやりたがらない。今年、法律が通った国家公務員の定年延長がその典型だろう。現在60歳の定年を段階的に65歳まで引き上げることが決まった。60歳以上はそれまでの年収の7割に抑えるという話だが、民間人からすれば、7割も保証されるのはまさに「天国」。もちろん、65歳まで身分保障があるからクビになる心配はない。

総務省は、「地方公務員についても、国家公務員と同様に段階的に定年を引き上げ、65歳とする必要がある」としている。つまり、地方も国の制度に右へ倣えで、原則として定年を引き上げなければならないのだ。

国債をバンバン出して財政赤字を膨らませている国は多少の人件費増加も耐えられるが、地方財政はそうではない。人件費の増加で軒並み赤字が巨額になりかねない。さすがに総務省は「ただし、職務と責任の特殊性・欠員補充の困難性により国の職員につき定められている定年(65歳)を基準として定めることが実情に即さないと認められるときは、条例で別の定めをすることができる」と書いている。今後、地方自治体が「定年」制度をどう定め、運用していくのかが大きな焦点になってくる。