東京都議会議員の森澤恭子さんが政治家を志したきっかけは子育てと仕事の両立での苦労だった。今は民間と政治の橋渡し役を目指す森澤さんは「政治の世界をよく知る元議員秘書や元官僚が政治家になるものだと考えがちです。でも、新しい政治に必要なのは民間の感覚で、社会課題の解決方法は企業など民間がもっている場合も多い」という――。

「女性活躍」に違和感

長女と長男はともに小学生。2人の子を育てる会社員だった森澤恭子さんが東京都議になったのは2017年のことだ。今年7月の都議選でも再選され、まさに「女性活躍推進」の象徴といえるだろう。

小学生になる子どもたちと。
小学生になる子どもたちと。(写真=本人提供)

しかし森澤さん本人は、この「女性活躍」が嫌いだ。

「女性活躍って言葉をなくしたいんです。女性はすでに育児、仕事、家事と頑張っているのに、もっと活躍しろというのに違和感があります。むしろ、男性が育児や家事で活躍できるようにすることが必要では」

 

出勤前に街頭演説

2017年の都議選に立候補するまで、政治活動の経験はなかった。いわゆる“駅頭えきとう”からはじめようと、朝の駅前に立ってマイクを握った。当時は会社員だったから、終わるとスピーカーなどをコインロッカーに預けて会社へ向かった。

2017年、選挙活動を始めたころの森澤さん。(写真=本人提供)
2017年、選挙活動を始めたころの森澤さん。(写真=本人提供)

「立候補って何からやればいいの? というレベルです。初めは真似事だから、『おはようございます、森澤です』の声も小さくて(笑)。所属した地域政党は結成したばかりで、人手やノウハウがあまりない。基本は自力でなんとかする。政治の世界を知らない人の立候補はハードルが高いと感じましたね」

ところが投開票日を迎えると、定員4人の品川区でトップ当選。3万2261票を獲得し、2位とは5000票近く差がついた。127議席ある都議会議員の1人となり、年4回の定例会をはじめとして都政に携わることになる。

「政治経験がない自分が、それまで活動してきた議員さんたちを差し置いて当選したわけです。古い議会から新しい議会への変化を求める有権者の期待を感じると同時に、責任重大だと思いました」

2019年に離党し、「無所属 東京みらい」(都議会会派)を結成。今年7月の都議選では、無所属で再選を果たした。