大企業でもビジネス経験を積む
ベンチャーのおもしろさを感じながらも、若い組織で活躍するにはビジネススキルが足りないと自覚した。森澤さんは2007年に森ビルに転職する。新聞の求人広告を見て、同社の理念とビジョンに共感したからだ。
「転職では企業理念やビジョンに共感できることを重視しました。会社が事業を通して何をめざしているか、ですね」
森ビルは当時、上海環球金融中心のオープンを翌年に控えているタイミングだった。応募したのは、広報担当。注目度は大きく、やりがいが感じられた。
当時の森稔社長が、メディアの取材を受ける際に同席することもたびたびあった。森社長が語った“東京の未来像”に感銘を受けたという。
「立体緑園都市というコンセプトがあります。高層ビルを建て、その周辺に緑を増やす。六本木ヒルズには、最上階の53階に森美術館があるのは、“文化都心”としての東京をイメージしているからです。最先端の企業が集まり、交流が起こる。そのような視点と東京の未来像は、都議の仕事にも影響しています」
出産後に感じた大きな壁
森澤さんは2010年に大学の同級生と結婚し、翌年に長女を出産。半年ほどたった頃、夫がMBA取得のために会社を辞め、シンガポールのビジネススクールへ入り、その後、現地で就職することになった。産休中の森澤さんは、自分も会社を辞めてシンガポールへ行くことに決めた。
「すごく悩みました。良い会社でしたし、いったん正社員でなくなると、数年後に帰国してまた正社員に戻るのは難しいんじゃないかと。それまでずっと途切れなく働いてきたから、正社員から外れるのを躊躇したんです」
シンガポールでは中華、インド、マレーなど多様な文化が共存する社会に触れて刺激を受けた。2013年、長男を出産する直前に帰国。出産後に再就職先を探しはじめると、いくつかの壁にぶつかった。
「正社員になれば、残業を前提としたフルタイムが基本でした。2人の小さな子を育てながら、その働き方は難しいと実感しました。学生時代に問題意識をもっていたように、女性が結婚、出産のライフイベントを経ても働きつづけるにはまだまだ様々な課題があるんだなと。いきなりフルタイムは厳しそうだから契約社員になりました」