トリプタンが劇的に効くことがあるので、片頭痛は慢性の頭痛の中で最も治療が簡単で楽といえます。それだけに思わずそこだけに頼ってしまいがちです。そうすると薬物乱用頭痛という新たな障害の温床になりますので、使い過ぎにはくれぐれも注意しましょう。
とはいえ、片頭痛の頻度が増えてくると、どうしてもトリプタンに頼ってしまいます。もしもトリプタンを月5回以上使用しなければならないときは日常的に予防薬の服用を考えます。
また、治療薬がどうしても効かない、副作用などで治療薬を使えない、薬物乱用頭痛になっているときなども予防薬を検討します。具体的な予防薬としては、
・抗けいれん薬系:バルプロ酸系、トピラマート(よく効くが日本では保険適応外)
・ベータ拮抗薬系
・カルシウム拮抗薬系
・抗うつ薬系
・抗CGRP抗体
などがあり、これらの予防薬を効果や副作用や患者さんの好みなどを考慮しながら1つずつ試していって、最も効果が高いものを選んでいくわけです(筆者註)。
市販薬には限界がある
片頭痛の予防はほぼ治療とイコールになります。治療薬/予防薬はあくまで一手段と考えて、運動療法、ストレスマネジメント(心理療法)、生活習慣の改善の3つを治療/予防のメインとし、薬物療法は援護射撃と考えましょう。
他の慢性の頭痛と異なり片頭痛の場合は、発作の最中は運動療法がかえって症状を悪化させることが多いため、運動療法は予防のためにとどめておきます。片頭痛を自分で和らげたいときは入浴を控え、静かな暗い場所で安静にし、少しでも睡眠をとることです。痛む箇所を冷たいタオルで冷やすのもいいでしょう。温めたり揉んだりは控えましょう。
※筆者註:参考文献は以下の通りです。
◎片頭痛の予防:Kahriman A, et al. Migraine and Tension-Type Headache. Semin Neurol. 2018;38:608-618. Marmu The Acute Treatment of Migraine in Adults: The American Headache Society Evidence Assessment of Migraine Pharmacotherapies - Marmura - 2015 - Headache: The Journal of Head and Face Pain - Wiley Online Library
◎片頭痛薬物療法のエビデンス評価:HA H, et al. Migraine Headache Prophylaxis. Am Fam Physician.199:17-24; 2019. Migraine Headache Prophylaxis - American Family Physician(aafp.org)
残念ながら片頭痛に劇的に効くトリプタンは市販されていません。そして片頭痛や群発性頭痛には市販薬で大きな効果は期待できません。医者に処方してもらいましょう。