15歳未満人口比率が高い地域の2つの特徴

図表6は15歳未満人口比率である。興味深いことに、比率の高い地域には、性格の異なる2種類があるらしい。

図表3、図表4と見くらべると気がつくのだが、ひとつは荒川区南千住、足立区千住曙町、同新田、同西新井栄町など、工場跡地などに中高層マンションが建設された、専門職・管理職比率が高い地域である。

もうひとつは、足立区舎人およびその周辺、そして東武伊勢崎線とつくばエクスプレス線にはさまれた地域など、比較的交通が不便でマニュアル職比率が高い地域である。

これらの地域では、交通の便利な場所の中高層住宅に子育て世代の新中間階級、比較的交通の不便な場所に同じく子育て世代の労働者階級が住むという形で、人口再生産が行なわれているようだ。

地下鉄千代田線の綾瀬駅から北へ1駅分だけ支線が出ており、終点に北綾瀬駅がある。ここから東へ少し歩いてから南に下ったところに、足立区東和とうわ3丁目がある。北綾瀬駅からは徒歩12分ほどだが、JR常磐線の亀有駅から歩いても17分ほどである。

ここの15歳未満人口比率は20.2%で、荒川区南千住8丁目(22.7%)や足立区新田3丁目(21.8%)などに次いで、荒川区と足立区の全町丁目のなかで5番目に高い。2007年に建設された、15階建てで全555戸のマンション、トーキョーガーデンスイートの所在地である。

中間層がじわじわと増加してきている足立区

実はこの地域は、私が大学に入学して最初に住んだ江東区の門前仲町から、1年半ほどで引っ越して住んだアパートのすぐ近くである。この地を選んだのは、ひとえに家賃が安かったからだった。

橋本健二『東京23区×格差と階級』(中公新書ラクレ)
橋本健二『東京23区×格差と階級』(中公新書ラクレ)

文科系の研究者をめざす学生なら普通のことだが、貧乏なくせに本だけはたくさんもっていたので、広くて家賃の安いところを探した結果、自然に足立区に落ち着いた。とはいえ、地下鉄を使えば都心まで20分ほど。大学へ行くにも便利だった。駅との間の道の両側には一戸建てや木造アパートが建ち並んでいたが、畑も点在していた。

いろいろな思い出があるので、何年かに一度は出かけて行って、住んでいたあたりを散歩する。畑はマンションに変わり緑は失われたが、家賃や物価が安くて住みやすいということ自体は、おそらくいまも基本的には変わらない。しかし、変化もある。

マンションの増加はずいぶん前から始まっていたが、次第にやや値段の高い中間層向けの大規模マンションが増え、ジェントリフィケーションが進んだことである。

図表7からわかるように、東京23区では1980年から2015年の間に新中間階級比率が上昇し、地図は全体に色が濃くなったが、足立区の新中間階級比率も12.4%から19.7%へと上昇し、地図の色分けではいちばん下のカテゴリーから、下から3番目のカテゴリーへと移動している。

最近、散歩に行ってみて、以前はなかったスーパーをみつけた。のぞいてみると、全体に値段は安かったが、肉売り場に黒毛和牛があったり、酒売り場に2000円台のワインやクラフトビールがいろいろあったりで、中間層の多様なニーズにも応えているようだった。