周囲と所得水準が異なる地域の特徴

これとよく似ているのは、港区元赤坂2丁目である。

ここには赤坂御用地があり、皇太子一家(当時、現在は天皇)や秋篠宮一家などが住んでいたのだが、敷地内に皇宮警察の宿舎などもあって、130人ほどの公務員とその家族も住んでいる。単独世帯が多いので、やはり単身の若い警察官などが多いのだろう。

赤坂離宮
写真=iStock.com/Agnesstreet
※写真はイメージです

しかし、このように特殊な事情があるわけでもないのに、都心、東部、西部を問わず広い範囲に、周囲と違って所得水準が高い、あるいは所得水準が低い場所が散見する。高所得の地域が密集する港区の片隅に、所得水準の低い場所がある。

池袋や新宿など、都心の繁華街のすぐ近くに、所得水準の低い場所がある。高級住宅地が連なる杉並区や世田谷区の片隅に、低所得世帯が集中する場所がある。全体としては所得水準が低い荒川区や足立区に、ポツンと所得水準の高い場所がある。

ときには、平均世帯年収推定値が300万円ほどの場所と600万円を超える場所が隣り合っている。こうしたところに注目していくと、中心と周縁、東と西という単純な原理で構成されているかにみえた東京23区の空間構造が、複雑なモザイク画のようにもみえてくる。

電子地図やインターネット上で公開されている地図と比べながら詳しくみていくと、理由が判明するものもある。よくあるのは、大規模な公営住宅が立地しているケースである。

たとえば都営青山北町アパートのある港区北青山3丁目、都営広尾ひろお5丁目アパートがある渋谷区広尾5丁目、そして新国立競技場の建設にともなって取り壊された都営かすみヶ丘アパートがあった新宿区霞ヶ丘などである。

所得制限をかけて居住者を集めるわけだから、これらは人為的に作られた低所得地域といっていいだろう。同じような地域は、世田谷区や目黒区など、西側の所得水準の高い地域も含めて、東京23区の全域にみられる。

足立区にポツンと存在する高所得地域

しかし、実は都営住宅がいちばん多いのは、低所得地域が全体に広がる足立区である。

その戸数は約3万戸で、都営住宅全体の約2割を占めている。低所得者の多い東側の外縁部に低所得者向け住宅が集中しているのだから、「中心と周縁」「東と西」の構造を、人為的に強めたということもできる。

反対に、所得水準の低い地域のなかに、高所得地域がポツンと孤立しているような場所もある。なかでも目をひくのは荒川区の東端、足立区との区界を流れる隅田川が大きくカーブした場所にある、荒川区南千住みなみせんじゅ4丁目と8丁目である。

ここはもともと、大きな紡績工場があり、その北側が木造住宅の密集地になっていた場所だが、1990年代から2000年代にかけて大規模な再開発が行なわれ、高層住宅が建ち並ぶ地域となった。

2015年の国勢調査によると、全世帯6102世帯のうち、約98%にあたる5976世帯までが、11階以上の高層住宅に住んでいる。都営住宅もあるので、高所得層一色というわけではないのだが、これは近年になって人為的に作られた高所得地域ということができる。このような例は、あとで詳しくみるように増加傾向にある。