専門職・管理職が集中する中高層マンション地帯

足立区は東京23区の最北端に位置し、荒川区はその南側の、隅田川を隔てたところにある。

荒川区は面積が10.16平方キロメートルと、台東区に次いで狭いが、人口は21万人を超える人口密集地域で、人口密度は豊島区、中野区に次いで高い。足立区は面積が53.25平方キロメートルと広大で、大田区、世田谷区に次いで広い。人口は約69万人である。

いずれも1932年に成立した東京35区のひとつで、荒川区は旧北豊島郡の南千住町、三河島町みかわしままちなどの4町、足立区は南足立郡の千住町、西新井まちなどの10町村が統合されて成立した。

図表3は、専門的・管理的職業従事者比率を示したものである。比率が高い地域は、まず西日暮里から町屋まちや、北千住、綾瀬を結ぶ地下鉄千代田線と、日暮里から三河島、南千住を経て北千住に至るJR常磐線の沿線である。

この両路線は乗り入れを行なっていて、北千住の先は同じ線路を走っている。これらの地域は、平均世帯年収推定値の高い地域でもある。都心で働く新中間階級が、駅の近くに住んでいるのだろう。

これらのなかには、大きな紡績工場の跡地に高層マンションが建てられた前述の荒川区南千住4丁目(30.0%)と8丁目(25.0%)、やはり工場の跡地に中高層マンションが建設された足立区千住あけぼのちょう(31.1%)なども含まれる。

そのほか、比率の高い地域が点在しているが、これらのなかにも大規模工場の跡地に中高層マンションが建設された場所がある。東伸とうしん製鋼東京製鋼所の跡地にハートアイランド新田しんでんが建設された足立区新田3丁目(26.3%)、日清紡績化成の工場跡地に西新井ヌーヴェルが建設された同西新井栄町さかえちょう1丁目(26.7%)などである。

つくばエクスプレス六町駅のある足立区六町4丁目(27.6%)には、とくに大規模なマンションがあるわけではないが、過去の地図と照らし合わせると、倉庫や農地だった場所に中小のマンションが多数建設されており、ここに多くの専門職・管理職が移り住んだものと思われる。

マニュアル職が多い地域の共通点

図表4はマニュアル職比率を示したものである。

「マニュアル職」とは、「主に手足を動かして行なう仕事」というような意味で、「農林漁業従事者」「生産工程従事者」「輸送・機械運転従事者」「建設・採掘従事者」「運搬・清掃・包装等従事者」を指している。

しかし、この地図をみる前にいま一度、図表5で東京23区全体の傾向を確認しておこう。ここから明らかなように、足立区は23区のなかでもっともマニュアル職比率が高い区である。

マニュアル職比率が高い地域は、葛飾区、そして江戸川区、荒川区、板橋区のそれぞれ北部、大田区の南部などに広がっているが、足立区での広がりはとくに顕著だといえる。図表4で確認すると、とくに北端の足立区入谷と同花畑はなはたには、50%を超える地域がある。

この2つの町にマニュアル職の多い理由は異なっている。前者は零細な工場、リサイクル施設、産業廃棄物処理場などが密集する地域であるのに対して、後者は都営住宅が立地している地域である。比率の高い他の地域も、だいたいこのいずれかのパターンに分類できそうだ。

荒川区と足立区だけで作成したこの地図では、荒川区のマニュアル職比率は低いようにもみえるのだが、図表5でみればわかるように、かなり比率の高い地域である。とくに比率が高いのは、荒川区町屋、同西尾久にしおぐなどで、やはり多くの町工場がある地域、あるいは都営住宅のある地域である。