所得水準は低下し続けているが好ましい変化も
同じことは、西新井ヌーヴェルにもあてはまる。
マンションに併設されたアリオ西新井という商業施設には広い自転車置き場があり、周辺の所得水準の低い地域から、多くの住民が自転車で買い物にくる。足立区は土地が平坦なので、自転車があれば遠くからでも買い物に来やすいのである。
ジェントリフィケーションとはいっても、決して富裕層というわけではない中間層の流入だから、旧住民とのギャップは大きくはない。都心や山の手の一部にみられるように、新しいマンションが周辺住民を排除するゲーテッド・コミュニティになったり、商店街が富裕層向けの店ばかりになって旧住民が困ることもない。
図表8に示したように、足立区のジニ係数は0.310と、東京23区で最低である。全体としては足立区の所得水準は、依然として低下を続けているが、他方では好ましい変化も起こっているといっていいだろう。
(脚注)
(*1)
面積は2021年の「全国都道府県市区町村別面積調」による。人口は2020年の「住民基本台帳」による。世帯数、65歳以上人口比率、15歳未満人口比率は2015年の「国勢調査」による。1人あたり課税対象所得額は2019年の「市町村課税状況等の調」による。年収1000万円以上世帯比率、年収200万円未満世帯比率は2018年の「住宅・土地統計調査」による。ジニ係数は2018年の「住宅・土地統計調査」から著者が算出した。算出にあたっては、平均世帯人員が区やそれぞれの所得階級によって異なることを考慮し、所得階級ごとに所得を平均世帯人員の平方根で割った疑似等価所得を用いている。