9月は子どもにとってストレスが大きくなる時期。子どもが「学校に行きたくない」と言い出したら、親はどうしたらいいでしょうか。精神科医の井上智介さんは「子どもが『行きたくないけど、頑張って行こうかな』と言っても、それを止めるくらいの方がいい」といいます――。
リビングルームに一人で座っている子供
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです

子どもは不調を教えてくれない

実はもともと9月というのは、子どもの心身の不調を意識しなければいけない時期です。夏休み中は、苦手な先生やいじめっ子など、いやな人に会わなくていいですし、いやなことから逃げられましたが、夏休みが終わると現実に向き合わなければならなくなります。これは子どもにとって大きなストレスになります。学校に行きしぶるだけでなく、赤ちゃん返りして、やたら親に甘える子どももいます。

9月1日は、例年子どもの自殺が増える最も危ない日ですが、そこを乗りこえてスタートを切れたとしても、そのあとに心身の不調に至る子は少なくありません。しかも今はコロナ禍で夏休みの延長や分散登校など、イレギュラーなことばかり。子どもは、もういっぱいいっぱいです。うまく対処できず、ストレスを貯めてしまうのです。

そのときに親として大事なことは、まず子どもの変化に「気づく」ことですね。親御さんの中には、「不調は、子どもが自分から教えてくれるものだ」と思い込んでいる人がいます。「子どもが言わなかったからわからなかった」と。しかし、子どもから教えてくれることは、ほとんどありません。

いじめの問題もそうですが、子どもはそもそも、親に心配をかけたくないと思っています。また、親に相談すると、先生たちを巻き込むことになって大ごとになり、結局自分がつらい思いをしてしまうのではないかという不安もあります。ですから、子どもが自分から言うことは、まずないと思ってよいでしょう。だからこそ、親自身が気づくことが、とても大切なのです。

「子どもと接している時間」実はわずか

子どもの変化に気づくには、当然ながら、子どものふだんの様子を知っていなければいけません。しかし、今は共働きが当たり前ですし、実は親が子どもと接している時間はそう多くありません。これを、まずは親自身が認識することです。「接する時間が少ないから、子どものふだんの様子は、わかっているようで、わかっていないんだな」と自覚を持つことが重要です。

だからこそ子どもと一緒にいる時間は、子どもの様子をしっかりと観察しなければなりません。