転々とする職場の人間関係が常に悪く、定職につけない

学童職員を辞めてからの和泉さんは、伯母が住んでいた家の片付けに明け暮れ、それが1年ほどして落ち着くと、自分の家に引きこもる生活を続けていた。

しかし2015年10月、「このままでは自分がダメになる!」と考えた和泉さん(当時24歳)は、従兄弟が勤めていた人材派遣会社に登録。油断すると引きこもりたい気持ちになる自分にむちを入れて面接に行き、車の部品工場で、3カ月ごとの更新契約で働くことに決まる。

ところが、数日もすると頭がぼーっとしてきて集中力が続かず、たびたび不良品を出してしまう。和泉さんが出した不良品を、正社員が残業をして探す……という事態を引き起こしてしまい、これ以上働き続ける自信がなくなった和泉さんは、3カ月で辞めてしまった。

その後、介護人材バンクセンターに登録したところ、2017年の7月1日からデイサービスで働く話が来た。だが、今度は働き始めてからしばらくして、他の女性職員たちから陰口を言われるようになり、1年を過ぎる頃には完全に無視され、結局1年半で退職。

失業給付を受けながら、次は介護タクシーの運転手になろうと普通自動車二種免許とホームヘルパーの資格を取得し、2018年2月から介護タクシー事業とお弁当の宅配を行う会社で、お弁当の宅配員兼ヘルパーとして働くように。

しかし、そこでは何かと厳しい口調で和泉さんに注意する年配女性職員に目をつけられ、次第に和泉さんはその女性職員に話しかけられるたびにパニックを起こすようになってしまう。

和泉さんは昼休みに、失禁や排便の失敗が頻繁になった父親のオムツ替えや昼食準備、インスリン投与のためにいったん家に帰るが、その女性職員は、和泉さんのいない時間を見計らって和泉さんの様子を施設の重役に逐一報告していたため、突然重役に呼び出されて叱られることが増える。そんな毎日に耐えられなくなった和泉さんは、わずか2カ月で辞めてしまった。

2019年7月。今度は市役所の清掃職員として働き始めた和泉さんは、最初の頃は、お昼に余ったお弁当を持ち帰らせてもらうなど、リーダーから良くしてもらっていたが、ある時から急に仕事量が増え、疑問に感じる。どうやら同じ清掃職員の女性からの嫌がらせだった。

入り口で食べ物と紙袋を手渡すマスクを着用したアジア人男性
写真=iStock.com/Kayoko Hayashi
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この頃、和泉さんの父親は、転倒することが増えた。そのため和泉さんは、自分が不在の間の父親が心配で、父親の部屋にウェブカメラを設置。仕事中でも時々スマホを確認し、父親が転倒している様子が映し出されると、リーダーに事情を話して早退させてもらっていたのだが、それが女性職員は気に入らなかったようだ。

2020年4月、深夜から明け方にかけて父親が腹痛を訴えたため、救急外来に連れて行ったところ、医師から「便が消化しきれないことによって、お腹にガスが溜まっています。しばらく入院し、絶食と点滴でよくなるでしょう」と言われた。

翌朝、ほとんど睡眠がとれないまま仕事に行くと、「動きが遅い! 何日も休んだくせに!」と女性職員から言われ、何もかもどうでも良くなった和泉さんは、その女性職員と言い争いをして、そのままリーダーに退職を相談し、25日付で辞めることに決まった。