家賃27万円のマンションで一人暮らしが始まる
10年4月末に港区内の総合病院の精神科に通院を始めたA子さんは、担当医師から「双極II型感情障害」(軽い躁状態と抑鬱状態を繰り返す障害)と診断された。
彼女から病名を聞かされたX子は同年7月、自宅マンションがある港区白金から程近い渋谷区広尾のマンションに移り住むようA子さんに提案するが、最終的にこの話はまとまらず、X子に「実家に帰りなさい」と宣告されたA子さんは翌8月、埼玉県内に移転していた実家に舞い戻った。
A子さんとX子との直接的な関係は、ここで半年以上途絶える。だがこの間もX子は、「あなたを広尾のマンションに住まわせる準備にかかった壁紙の張り替え費用など、50万円を支払ってほしい」などと請求。X子の言いなりだったA子さんは、何一つ疑うことなく、X子に月数万円を支払い続けた。
そのA子さんに11年3月、X子から7カ月ぶりのメールが届く。幼い頃から自分に自信が持てず、完全にX子のマインドコントロール下にあったA子さんにとって、このメールはむしろ待ちかねていたものだった。
「私の身の回りの手伝いをしてくれれば、マンションの家賃を支払える程度の報酬を出すから、東京に戻って来なさい」
メールが届いた翌月の同年4月、再び上京したA子さんは、実家に戻る前にX子から指示された渋谷区広尾のマンションで一人暮らしをスタートさせる。家賃は月27万円。
これを捻出するためアルバイトを始めたA子さんだったが、すぐに辞めてしまう。さらにX子の指示でこなしていた買い物などの雑務も、X子に「仕事の質が低いので、報酬は支払わない」などと難癖をつけられ、収入の道を閉ざされてしまった。
「あなたも風俗店で働けばいいじゃない」
窮地に追い込まれたA子さんは、消費者金融から合計40万円を借り入れ、何とか4月分の家賃を支払ったものの、月27万円もの家賃を支払い続けることは到底不可能。途方に暮れるA子さんを前に、X子がとうとう本性を現した。
「相談者の中には、風俗で稼いで相談料を支払っている子もいる。あなたも風俗店で働けばいいじゃない」
マインドコントロールされているX子から勧められると、A子さんは何も逆らえない。11年6月5日、A子さんはX子が指示した港区新橋のファッションヘルス店のコンパニオン嬢として働き始める。1週間後、そんなA子さんをX子がさらに追い詰めた。
「あなたがマンションで過食嘔吐を繰り返すから、排水管で異臭がして、管理業者や住民から苦情が殺到しているの。排水管を調べたり修理したりするのに大金が必要で、最悪の場合は一棟丸ごと買い取ることになり、あなたは何十億円も支払わなければならなくなる。ファッションヘルス店で早番(午前9時~午後1時)と遅番(午後4時~翌日午前零時)の両方に出勤しないと、とてもおカネが追いつかないよ」