仕事ができる人は、挫折を知っている
勉強ができたことは、誇れることです。しかし過去の評価にとどまらず、現在と未来に向けて結果を出せるように日々取組み、ビジネスで必要な知見と判断力を磨き続けることは欠かせません。
ビジネスで求められる答はひとつではなく、最善策を考え出して結果が出るように行動することが欠かせません。その上で部下や同僚、外部の人たちとチームを組み、実現に向けて取り組んでいくことになります。
経済ジャーナリスト岸宣仁さんは新著『財務省の「ワル」』(新潮新書)の中で、以下のようにつづっています。
『高級官僚、とりわけ財務官僚には、「挫折を知らないエリート集団」というイメージが常について回る。だが実際は、寄り道せずに最短距離で財務省に入るより、多少回り道した人のほうが最後の栄冠を手にする確率が高いのは、どんな理由によるのだろう。(中略)それは人として考えれば当然の結論ともいえるが、心の温かさが滲み出る人間味であり、もっと砕けた言い方をすれば、愛嬌や可愛げといった人間性の豊かさを示す何かである。財務官僚に限る話ではないが、どんな世界でも回り道をした人のほうが、人間味を感じさせるプラスアルファを持っているケースが多い。(中略)あえて単純な物言いが許されるなら、偏差値教育による学校秀才と、組織でもまれる社会人秀才とは別物、ということを言外に示唆しているのではないだろうか』
学校教育では学べなかったことを実社会で経験し、それを生かした人にチャンスが訪れることを知ると、凡人の自分としてはとても救われる思いがします。
偏差値教育が生んだ「学校秀才」に決定的に欠けているものは、挫折です。心が完全に折れてしまう挫折は害悪でしかありませんが、再起可能な挫折はむしろ自身の人間力を高め、職場で求められるスキルの土台になります。
高学歴でも仕事ができない人は、このコラムを読んでくれないかもしれませんが、学歴の高低にかかわらず自分の弱さに向き合った経験がある人は強く、また等しく「社会人秀才」への道は開かれているのです。