今、就活における性差別「就活セクシズム」に対して反対の声が上がっています。就活時の服装やマナーなどを、男性はこうあるべき、女性はこうあるべきと指導するような風潮はどこから生まれたのでしょうか。男性学の専門家、田中俊之さんが指摘する2つの「元凶」とは──。
面接を待つ女性
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きっかけは大学のキャリア教育義務化

学生の就活スタイルがここまで杓子定規になったのは、バブル崩壊以降と言われています。かつて学部や研究室の推薦で就職先が決まることも多く、学生は比較的型にはまらない形で就職活動をすることができていました。

しかし、バブル崩壊後は推薦による就職が減少し、代わって大学の就職課がそうした役割を担うことになります。ここから徐々に就活のマニュアル化が進み始めたのですが、その流れが一気に加速したのは2010年、大学のキャリア教育が義務化されてからではないかと思います。

この年、大学設置基準が改正され、文科省から各大学に「キャリア教育をしなさい」というお達しが出ました。これによって、従来は課外のプログラムだったキャリア教育が、正規の授業に組み込まれることになったのです。

実務経験者任せのキャリア教育の授業

当時、すでに僕も教員だったのでよく覚えていますが、この決定には大学も教員も大いに困惑しました。教員は就活したことも企業で働いたこともない人がほとんどですから、いきなりキャリア教育の授業をしろと言われてもできるはずがありません。

そこで多くの大学では、実務経験者を非常勤講師として招き、キャリア教育の授業を任せることにしました。こうして学問とはまったく別の、ある意味特殊な授業が始まったのです。