夫が収入をすべて家計に入れ、その家計は妻が一括して管理する――。家計管理に関して、そんな方法をとっている家庭も多いのではないでしょうか。でも実は、こうした日本の家計のありかたは世界的に見てかなり特殊なのだとか。その実態や原因を社会学者の筒井淳也さんが解説します――。
家計「妻管理型」が35カ国中トップ
日本では、家計に関してよく「妻が財布の紐をにぎっている」と言われます。家計は資産と所得で構成されていますが、ここでいう「財布」とは所得のほう。そして「紐をにぎる」とは、日常的な家計管理業務を行っていたり、何にお金を使うかという決定権を持っていたりする状態を指します。
そして、日本の家庭に多いのは「財布=夫、紐をにぎる=妻」という形。家計管理は妻で決定権は夫というケースもありますが、いま何にいくらお金を使うべきかは、日常の収支を管理している人のほうがよくわかっているものです。そのため、この場合もやはり妻の発言権が大きくなる傾向にあります。
では、海外ではどうなのでしょうか。日本では一つの財布(所得)を共有する夫婦が多いのに比べ、欧米ではこのやり方は必ずしも一般的ではありません。
実際、2012年に行われた家計管理の国際比較データ(ISSP-2012)を見ると、日本は妻が家計を管理して夫に小遣いを渡す「手当(妻管理)型」が55.7%と、半数以上にのぼっています。これは調査が行われた35カ国の中では断然トップです。50%前後なのは、ほかに韓国とフィリピンのみで、最小値のスウェーデンに至ってはわずか1.9%となっています。