医療機関にうつ気分を訴えると、「抗うつ薬」を処方されることが多い。しかし、それが「誤診」であると治療が長期化してしまう。精神科医の亀廣聡さんは、「抑うつ状態を示す病気のうち抗うつ薬が効くのは『大うつ病』だけ。誤診に気付かないと投薬量がどんどん増えてしまい、『薬のせいで病気』という状態の人もいる」という――。(第1回/全2回)

※本稿は、亀廣聡・夏川立也『復職後再発率ゼロの心療内科の先生に「薬に頼らずうつを治す方法」を聞いてみました』(日本実業出版社)の一部を再編集したものです。

暗いコンクリート室
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なぜずっと薬を飲んでいても治らないのか

私のクリニックは、メンタルの不調によって休職を余儀なくされた人たちのリワーク(職場復帰)支援を専門とする心療内科です。当クリニックには、長期間症状が改善せず職場復帰できない患者さんが数多く転院してきます。

ほとんどの患者さんが前院で「うつ病」や「抑うつ状態」などと診断され、抗うつ薬や睡眠薬を飲み続けている人たちです。長期の服薬にもかかわらず、なぜ、改善しないのでしょうか。

理由を述べる前に「うつ」について簡単に解説しておきます。憂うつ、落ち込むといった気分が強く、かつ持続していることを、日常的には「うつ」「うつ状態」と表現されますが、精神医学では「抑うつ状態」という用語を使います。一時的な気分の落ち込みのような病的でないものと、認知症に起因する症状を除くと、抑うつ状態を示す病気は次の6種類程度に分類されます。

・双極性障害
・大うつ病(うつ病)
・抑うつ体験反応(神経発達障害との併存症として広義の適応障害を含む)
・症候性抑うつ状態
・統合失調症の抑うつ状態
・薬剤性抑うつ状態

じつは、抗うつ薬が効くのはこの中の「大うつ病(うつ病)」だけです。

しかし、抑うつ状態を訴える患者さんに対し、その状態だけにフォーカスしてうつ病と診断し、抗うつ薬を処方するケースが非常に多いのです。