1年4カ月の治療で完全に職場復帰

Bさんは1年4カ月の間、日曜日以外の毎日、当クリニックに通ってくれました。そしてリハビリ出勤を経て、ついに職場復帰を果たします。リハビリ出勤の際、会社の上司は「あれだけたくさんの薬が1剤になってあとは漢方薬なんて、本当に治ったと言えるのか。二度と休職しないと保証できるのか」と復職に懐疑的でしたが、その後のBさんの安定した働きぶりから、完全復職を認めました。

亀廣聡・夏川立也『復職後再発率ゼロの心療内科の先生に「薬に頼らずうつを治す方法」を聞いてみました』(日本実業出版社)
亀廣聡・夏川立也『復職後再発率ゼロの心療内科の先生に「薬に頼らずうつを治す方法」を聞いてみました』(日本実業出版社)

Bさんのような双極性障害は、脳神経系のバランスの乱れによって、躁状態とうつ状態が混合して同時に存在してしまう「混合状態」が問題になります。混合状態では、

・意欲はあるのに気分が悪くて動けない。だからあせる。
・気分はいいのに何かしようという意欲が湧いてこない。だからイライラする。

というような、なんとも耐え難くつらい「抑うつ状態」が現れます。

人はそのような不安やあせり、イライラを感じると、自分で「なんとか解消したい」と思うものです。たとえば、とくに若い女性などは大量に食べ、吐いたりします。そのとき、瞬間的にスッキリするという体験をするとそれが習慣になります。

表層だけを見て根本的な問題を見落とす

そういう人が精神科を受診すると「摂食障害」と診断されることもあります。食べて吐く代わりにお酒やドラッグに依存する人は、「アルコール依存症」「薬物依存症」と診断されます。理由もないのに常に不安を感じると訴える人は、「不安神経症」という病名になって、抗不安薬を処方されることになります。

問題なのは、これらの診断名は、患者の表層的な症状と行動だけをとらえてそう表しているだけで、根本的な問題が明らかになっていないことです。メンタル不調で現れる多くの症状の根本には、双極性障害による混合状態が隠れています。そこに目を向けずに、さまざまな病名で診断され、薬を出され、長期間苦しみながら病気と戦っている人が非常に多いのです。