セカンドオピニオンを求めたが
この薬の量にはBさんも不審を感じており、近くの大学病院にセカンドオピニオンを求めましたが、診断はうつ病で間違いなく、薬の量も妥当と言われたそうです。その後、名の通った別の先生のクリニックを受診したところ、「たしかに薬が多すぎる」ということで転院。当初は薬が減って喜んだものの、対症療法に偏った治療のせいか、気付いたときには以前より増えて、山のような薬を飲まされていました。
そして、すがる思いで相談に訪れた内科医(漢方医)に紹介され、当クリニックを受診されたのでした。Bさんの性格は粘り強く、あきらめずに会社に通っていましたが、当時は何回目かの休職中で、会社から「次はない」と言われているようなタイミングでの受診でした。
診察すると全く別の病気だった
結論から言うと、Bさんはうつ病ではなく、私は「双極Ⅱ型障害」と診断しました。
双極性障害は、一般に「躁うつ病」と呼ばれる病気です。「Ⅰ型」と「Ⅱ型」の2種類があり、Ⅰ型は躁状態が顕著に現れますが、Ⅱ型は軽躁状態程度の緩やかな山が長いため気付かれにくいという特徴があります。どちらも、うつ病のように原因がよくわからない病気ではなく、脳神経系のバランスが崩れることで発症するというメカニズムがわかっている病気です。
双極性障害の中でも双極Ⅱ型障害は、薬に頼らずに、医師の指導のもと生活リズムや運動・食事などの生活習慣を改善し、さらに認知行動療法などを根気よく行うことで症状を改善させることができます。少々時間はかかるかもしれませんが、寛解状態(病気による症状が好転もしくはほぼ消失し、医学的にコントロールされた状態)に持っていくこともできます。
Bさんはうつ病ではないのでまず抗うつ薬をやめ、気分安定薬1種類だけにしました。あわせて睡眠薬も抗不安薬もすべてやめて、代わりに漢方薬を処方しました。
睡眠薬や抗不安薬、一部の抗うつ薬を中止すると「離脱症状」が生じます。Bさんにも、異常な発汗、手や体幹の震え、強い不安やイライラが生じました。イライラが私に向かい、「薬を飲んでいる方が楽だ!」と責められる日々がしばらく続きましたが、その都度、すでに回復してきた部分に目を向けさせ、勇気づけ、励まし、なんとか離脱症状の波を乗り越えました。