トリアージは患者を見捨てているのか

これを書いているのはGW前で、緊急事態宣言が発出されたところである。

本当は5月にふさわしい、読者が明るい気持ちになれるようなテーマを考えていたのだが、医療現場が逼迫している要因の1つで、あまり議論されていないことを取り上げたいと思う。

4月のある日の深夜1時頃、新型コロナの重症患者を診る当直医と電話で話した。病院名は明かせないが、新型コロナ発生当初から第一線で治療を続ける医師は、現況を打ち明けてくれた。

「医療の質を上げようとすれば量(患者の数)は稼げません。新型コロナに限りませんが、医療において『質と量』は反比例です。『たくさんの患者さんを診る』というのと『1人を集中して助ける』ことの両立は難しい」

女性看護師は、患者の心臓ビットを聴診器で聞いています。
写真=iStock.com/Tempura
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「国民が質のいい医療を諦めるということか?」と私が尋ねると、その医師は「我々の治療に対する“結果”に対して納得してほしい」と訴えた。

「新型コロナにかかった100歳近い患者さんご本人がもう治療は必要ないと言っているのに、『死なれたら困る。すべての治療をしてくれ』と言うご家族がいました。その方のお子さんといっても、もう70代なんです。そういうことがある限り、重症患者さんは増える一方でしょう。患者数を減らすには、大変失礼ですが一定以上の年齢の方の治療を控える、結果的に天に召されることも納得していただくという考えが必要だと思います」