創業以来ほぼ全員リモートワークという会社「キャスター」を経営する石倉秀明氏の下には、コロナ禍で企業・マネジャーから続々相談が寄せられるようになったという。葛藤する企業の姿から見えてきたのが、そもそも「多様な働き方をする人たち」のチームでパフォーマンスを上げることができない日本企業の現実だった。具体的に何が問題なのか、「マネジメント・シフト」をどう進めるべきなのか。近著『これからのマネジャーは邪魔をしない。』から特別公開する。(第2回/全2回)

*本稿は、石倉秀明『これからのマネジャーは邪魔をしない。』(フォレスト出版)の一部を再編集したものです。

「モチベーションが高い=成果が出やすい」は幻想

「部下のモチベーションが低くて……」と悩むマネジャーがたくさんいます。

ビジネス書においても、「モチベーションを上げる方法」などといったものがよく見られます。モチベーションの低いメンバーを叱咤激励しったげきれいしたり、モチベーションの研修などを受けさせたりしているマネジャーも多いでしょう。

「モチベーションが必要ない」と言うつもりはありません。ただ、「モチベーションを上げることがマネジャーの仕事になってはいけない」と思うのです。むしろそれが、逆にチームのメンバーのモチベーションを下げる原因になってしまうことには注意が必要です。

そもそも「モチベーションを上げると、成果が上がる」というのは幻想以外の何物でもありません。

ビジネスの成功
写真=iStock.com/Nattakorn Maneerat
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モチベーションに関する2つの勘違い

モチベーションに関する勘違いは2つあります。

①モチベーションは高いほうがいい
②モチベーションが高いと成果が出る

これはどちらも間違いです。

まず、ひとつ目の「モチベーションは高いほうがいい」というものですが、この前提が間違っています。マネジャーは、チームのミッションを達成することが「仕事」です。メンバーのやる気があるか、モチベーションを高く維持できているかどうかは、本来マネジャーがマネジメントすることではありません。

実際、「モチベーションは高いものの、結果を出さない人」と「モチベーションは低いけれど、結果を出してくれる人」のどちらがいいでしょうか。おそらくほぼすべての人が後者を選ぶはずです。

モチベーションが低くて行動していないのであれば、行動していないことを指摘することが正しいのです。いえ、他人のモチベーションをなんとかしようと考えることがそもそも間違いです。

モチベーションが低いこと・高いこと自体にフォーカスを当てるのではなく、事実として、「与えられた役割をこなせているか」「与えられた目標を達成できたか」にフォーカスし、マネジメントすることです。