※本稿は、馬田隆明『未来を実装する テクノロジーで社会を変革する4つの原則』(英治出版)の一部を再編集したものです。
テスラ、スペースX、パランティア…公共が大きなビジネスになる時代
ビジネスの1つの大きな流れとして着目しておきたいのが、かつてであれば政府が取り組んでいたような公益に利する事業に取り組むスタートアップが増えてきていることです。
トヨタ自動車を抜いて「世界一の自動車メーカー」になったテスラを筆頭に、スペースX、パランティアといった企業が世間をにぎわせています。テスラはエネルギーの変化を生み出そうとし、スペースXは宇宙開拓を進めようとしています。パランティアは政府系を中心としたビッグデータ解析を行うスタートアップです。
これらの企業はB2C、B2Bではなく、政府や自治体(ガバメント)にサービス提供を行う「B2G」や、ビジネスを使って公共(パブリック)に貢献する「B2P」とも言える領域でのスタートアップです。この数十年、新自由主義やニューパブリックマネジメント(NPM)の台頭などで政府の機能が次第に小さくなるにつれて、かつて行政が行っていたサービスを民間が徐々に請け負うようになってきています。
その結果、公共に近い領域で新しいビジネス機会が生まれています。そしてこうした領域も規制と関わることになるでしょう。また並行して、民間企業による社会貢献が、投資家や市民から本格的に求められ始めています。
従来も企業は社会貢献活動をCSR(企業の社会的責任)という文脈で実施していました。しかしそれはビジネスにとっては本流ではない領域での活動が主でした。しかし昨今はESG投資(環境、社会、ガバナンスを考慮した投資)やSDGs(持続可能な開発目標)などの流れを受け、ビジネスの本流において社会貢献が求められ始めています。
ESG投資が盛んになることで大きく変わったことは、企業の価値評価の方法です。かつては財務のみによって行われていた企業の評価が、今では財務だけではなく、SDGs等の社会課題への取り組みや、ESG関連のレポートや評価レポート、NPOやNGOなどの団体からの訴訟を抱えていないかについて調べたうえで、機関投資家が投資対象とするかどうかを決めていく、という流れに変わりつつあります。また利益以外に人と地球環境を考慮する、トリプルボトムラインという企業評価のフレームワークも注目を浴びています。