介護と仕事の両立は簡単なことではない。仕事をしながら介護をする愛媛県在住の59歳男性は「自分の自由に使える時間が無くなったが、逆に被介護者を一人にして外出すると気になりかえってストレスになる」という。立命館大学産業社会学部の津止正敏教授の著書『男が介護する』(中公新書)より一部を紹介する――。
※本稿は、津止正敏『男が介護する』(中公新書)の一部を再編集したものです。
多数派は「ワーキングケアラー」
仕事と介護の緊張関係に直面しながら働く人は346万3千人。「2017年就業構造基本調査(総務省統計局)」が明らかにした数値だ。5年に一度実施されるこの調査の直近のデータだが、そのうち男性が151万5千人、女性が194万8千人。過去1年間(2016年10月~17年9月)で家族の介護のために離職した人は9万9千人に上った。
まず図表1の有業者視点から見れば次のようになる。
①働いている人の約20人に1人(5.2%)は介護している労働者である。
②働いている男性の4.1%、女性の6.9%は介護している労働者である。
③働いている50代の人の10.4%は介護をしている。
これだけでも無視できない大きな数字ではあるが、それでもまだ働いている人の中で介護する人は少数派だ。だが、これを介護者視点から読み取ると次のようにさらに驚愕の実態となる(図表2)。
①介護者の半数以上(55.2%)は働いている。
②男性の介護者の65.3%、女性の介護者の49.3%は今も働いている。
③生産年齢層の60歳未満の、男性介護者の85.1%、女性介護者の65.6%は働いている。50代の男性介護者の87.5%は仕事に従事している。
介護者の、とりわけ男性介護者の大多数はもうすでに有業者、介護しながら働いている「ワーキングケアラー」なのだ。