「外出すると気になり、かえってストレスになる」

介護のために退職した人が2人いるが、そのうちの1人は「介護が始まって1年くらいでクビになった」(49歳、広島県)という。常勤だが介護休業など「取っていない。会社ではそういうものは取らせてくれない」(56歳、大阪府)と憤る人もいる。仕事と介護の両立をなんとかこなしているが厳しい。「時機を見て退職し、介護に対応して、時間的なゆとりを確保したい」(58歳、沖縄県)との声も介護退職に敷き詰められたレールのようだ。

働きながらの介護によるストレスも大きい。たまには一日ゆっくりしたい、2~3日でいいからのんびりしたい、一日中家事をするわけではないが100%自由な時間がなくなった。「自分の自由に使える時間が無くなったが、逆に被介護者を一人にして外出すると気になりかえってストレスになる」(59歳、愛媛県)と訴えている。

「年収1000万円が240万円になった」

家計も苦しい。「年収1000万円が240万円になった。会社が倒産しそうになっている」(49歳、青森県)という自営業の息子。介護で泊りがけの仕事ができなくなるなど仕事の自由度が低下したためだ。「今は父の年金で暮らしている。〔月収は〕約20万円」(59歳、愛媛県)という息子は、私たちの取材に対して、父の介護がなくなれば年金を失う、年金で暮らすということはずっと介護を続けるということ。どちらにしても苦しいよね、と呟いていた。

これらのデータは2006年時のものであるが、親の介護を担い仕事との両立に戸惑う息子たちの暮らしは、今もさほど変わらぬ状態にあるのではないかとも推測されるがいかがだろうか。介護が始まって、介護サービスを利用しながら、他の家族の支援を受けながら、自らを叱咤激励しながら、仕事と介護をかろうじて両立。しかし、介護者自身の体調不安や職場の無理解、被介護者の状態悪化などその他諸々の環境が刻々と変化する状況のなかで、不安はより増殖してついには離職を余儀なくされる。そうしたプロセスが、この5人の息子たちの事例からもうかがえる。