福島県にある児童演劇「劇団風の子東北」。東日本大震災の影響で、劇団の経営は危機に瀕したが、制作・脚本の澤田修さんはたった一人残り、「フクシマ発」という劇を上演している。澤田さんが舞台に立ち続ける理由とは――。
制作・脚本の澤田修さん
写真=筆者提供

脚本がない「ドキュメンタリー芝居」

「これは演劇なんですか? 講演会なのですか?」

私が脚本・制作・主演を務める舞台「フクシマ発」を観た人からよく聞かれる質問です。舞台に立つのは私ひとり。ラジオの公開生放送という設定で、パーソナリティと新聞社の震災担当者を一人二役で演じます。

お便りやリクエスト曲を紹介するほか、会場インタビューもあります。観客に自由に質問してもらうのですが、新聞社の震災担当者を演じている私は、震災に関わることはすべて答えなければなりません。この劇には脚本はないわけです。だから大事なことは、演技力よりも、その場できちんと質問に答えること。私は勝手に「ドキュメンタリー芝居」と名付けています。

2013年5月にこの作品を上演開始するまで、私は制作や脚本を担当する裏方で、表舞台に立つ人間ではありませんでした。そんな演技の素人がやっている舞台ですが、おかげさまで全国各地の小学校、中学校、NPO法人などから声をかけていただき、現在までに90回以上の上演を重ねています。

現在67歳。これからも体が動く限り、この舞台を続けていくつもりです。