オンライン会議では表情の豊かさが仕事の成果に直結する。サービスビジネスコンサルタントの安東徳子氏は「表情筋を鍛えている人は、表情のバリエーションが豊富。日常生活で鍛えるには、“変顔・あいうえお・笑い”の3つを意識するといい」という――。
在宅勤務でビデオ会議
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ビジネスは「小さな会議室」で「顔コミュニケーション」の時代に

会議室が驚くほど小さなサイズになった。13.3インチ、ほぼA4サイズの画面。そう、オンライン会議の舞台である。

新型コロナウイルスの感染拡大により、ZoomやTeamsなどを使ったオンライン会議が瞬く間に普及し、ビジネスコミュニケーションはリアルな空間から小さなパソコン画面上でする、新しい形態にシフトした。

こうした「小さな会議室」では、顔だけがコミュニケーションツールとなる。ここでは、そんな「顔コミュニケーション」時代への対処法を紹介したい。

まず、顔しか見えない「顔コミュニケーション」においては、従来のコミュニケーションと何が違い、何を変えなくてはいけないのか。

「人は見た目が9割」と言われることもあるように、コミュニケーションに視覚情報は欠かせない。リアルで対面した際、人は顔だけでなく姿勢やしぐさなど全身の視覚情報を取り入れる。さらに洋服の趣味やセンス、アクセサリーや時計、靴などの質感やブランドも、相手を見極める重要な判断基準となる。

それに対してオンライン上のコミュニケーションでは、取得できる情報がほぼ顔だけになる。ワイシャツを着ていれば、下がパジャマのズボンでも画面に映らなければわからないし、アルマーニのスーツを着ていても細部まで見えないから誰も気づかない。唯一の視覚情報が「顔」という、なんともアンバランスなスタイルのコミュニケーションが、今後のスタンダードのひとつとして定着することは確かだろう。

職業によって異なる表情スキル

相手の注目が顔に集まるということは、リアル対面で相手の全身から視覚情報を集めていたエネルギーが、顔だけに集中することを意味する。そのため、リアル対面では見逃されてきた表情の細かな動きが目に留まることになる。

大きな身振り手振りは、「小さな会議室」には入りきらない。時には腕組みや仁王立ちなどのノンバーバル(非言語)コミュニケーションを使って部下に対して威圧感を与えてきた管理職も、画面越しではそれが使えない。また、膝を合わせる、指をそろえるなど、ノンバーバルな所作も無意味となり、顔だけで品格やマナーを表現しなければならない。

表情に関して、ウエディング業界や理美容業界、教育ビジネス業界を中心に長年コミュニケーションを教えてきた私自身の経験から気づいたことがある。それは職業ごとに表情スキルに差があるということだ。

たとえば接客業に携わっている人たちは、日頃から笑顔を意識する習慣が身についているので、表情豊かな人が多い。入社した時から笑顔の徹底教育をされてきたため、表情をコントロールするスキルが高いのだ。一方で、エンジニアやクラフトマンなど、個々で取り組む時間の多い人たちは、表情が乏しい傾向がある。

こうして職業によって表情の豊かさやコントロールスキルが大きく異なるのは、「表情筋の鍛え方」が違うからである。