Twitterで短編小説を書く神田澪さんが、これまでの作品をまとめた『最後は会ってさよならをしよう』(KADOKAWA)を出した。フォロワーからお題のリクエストも受けながら1100篇以上を発表してきたが、2020年は「別れ」や「距離」といったテーマを求める声が圧倒的だったという。その理由とは――。

過去を切り取って縫合する「整形」

これまで4年にわたり、Twitterで「140字ぴったりで完結するものがたり」を書いてきました。

もともとは、「小説などの長い文章が読めない、読む時間がない」という方にも楽しんでもらえるものを書きたいという思いで始めた試みです。

現在、日本版Twitterの文字数制限が140字。その長さであれば、苦なく読んでもらえるかもしれない…と思ったのが始まりでした。

140字という文字数は少なく思えますが、実際は想像以上に豊かな物語を書くことができます。これまで1100篇以上の「超短編小説」を書いてきた中で「140字でこんなふうに話が書けるとは」と驚かれることが多々ありました。『最後に会ってさよならをしよう』に収録し、Twitterでもたくさんのいいねをいただいた、人気の作品の背景を少しだけご紹介させていただきます。

過去整形
愛の形が変わってしまうほど遠い未来、
市民の間では『過去整形』が爆発的に流行した。
就職前、進学前、後ろめたい過去を切り取って縫合する。

しかしながら過去整形を済ませた学生達の
面接突破率はそう高くない。
研究者は語る。 「過去を乗り越えなかった彼らは
精神的に幼くなってしまう傾向があります」

綺麗に消せても、大切な何かを失うかもしれない

【解説】
あの過去を無かったことにしたい。仕事で大失敗をした時、こっぴどく振られた時、そう思う人は少なくないと思います。この物語は都合の悪い過去を切り取って縫合する「過去整形」が可能になった未来が舞台です。(皮肉なことに、3年以上前に書いたこの作品を書籍に掲載するにあたり、物語のオチを大きく「整形」することとなりました。ただし、元の文章はツイッターに載せたままです)

さて、後ろ暗い過去がある人にとっては夢のような「過去整形」ですが、本当にメリットばかりでしょうか? デメリットがあるとしたら、失敗することがある? 整形がバレる? 

今回は、綺麗に「過去整形」が済んだとしても尚失うものがあるとしたら何か? を考えました。過去を切り取ることは経験を失うことと同義です。今のあなたが消したいと思っているつらい過去も、切り取ってしまえば大切な何かも抜け落ちてしまうのではないか……。

もし「過去整形」できるなら、あなたはやってみたいですか? どんな過去を変えたいですか? ぜひ感想を聞かせていただけたら嬉しいです。