世界最大IPOが直前で延期になったワケ

今や流通総額世界トップのEC(電子商取引)企業である中国アリババグループの金融関連子会社で、世界最大のモバイル決済プラットホーム「Alipay(支付宝、アリペイ)」を運営するアントグループが2020年11月3日、目前に迫っていた株式の新規上場の延期を発表した。

中国のアリババグループ創業者、馬雲(ジャック・マー)氏。
中国のアリババグループ創業者、馬雲(ジャック・マー)氏。(AFLO=写真)

アントが上海と香港の「科創板(中国版ナスダック。新興ハイテク企業向け市場)」に同時の新規上場を申請したのは20年8月。9月には上海証券取引所が上場を承認、10月には香港証券取引所も承認して、11月上旬の上場が取り沙汰されていた。

上海と香港で同時に上場した場合、調達金額は合計で最大350億ドル(約3兆7000億円)。実現すれば19年に上場したサウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコの調達額(294億ドル)を抜き去って史上最大規模のIPO(新規公開株)になると内外の投資家の関心を集めていた。

ところがアリババの創業者でアントの経営権を実質的に握っている馬雲(ジャック・マー)氏以下の経営幹部が、金融当局から事情聴取を受けたことを理由に、上海証券取引所がアントの新規上場の一時停止を発表。同日、アントから香港の上場延期も発表された。