関西人は、なぜ“阪急”を別格扱いするのか。鉄道ライターの伊原薫氏は「創業時から一貫して『人々の暮らしをより豊かにする』という目標を掲げ、そのための労力を惜しまなかった。それが鉄道会社らしからぬブランド力になった」という——。
11年連続1位・阪急電鉄の強さの理由
新商品や新サービスが次々と登場する中、顧客から支持され続けるブランドの構築は企業にとって大きな課題となっている。その中で、関西の私鉄大手・阪急電鉄は、JCSI(日本版顧客満足度調査)の近郊鉄道部門において、11年連続の1位(2020年現在)を獲得。関西人から圧倒的支持を得ている。
その秘訣はどこにあるのだろうか。それを解き明かしたのが、近著『関西人はなぜ阪急を別格だと思うのか』(交通新聞社新書)だ。
私は「鉄道会社らしからぬブランド力」こそが、阪急が不動の地位を築いた理由だと考えている。本稿では、関西人が阪急を別格だと思う理由を3つに絞って紹介しよう。
①人々の暮らしをより豊かに
阪急電鉄の創始者、小林一三は、日本人なら誰もが知る企業をいくつも生み出してきた。世界初のターミナルデパート「阪急百貨店」や、日本を代表する女性歌劇団「宝塚歌劇」、映画業界のトップランナー「東宝」など……阪急阪神東宝グループを成す企業は、生活のあらゆる場面で活躍しているがゆえ、あらゆる人にとって身近な存在だ。
そして、生活に寄り添うだけではなく、「より豊かな暮らし」という価値を提案し続けていることが、阪急の強固なブランドを支えている。