私はメーカーに勤めていますが、わが社ではIT部門が最高財務責任者(CFO)の下にあります。CFOにはITを評価する時間などありませんから、結局ITは、緊急の問題があるときしか注目されない存在になっています。これは問題ではないでしょうか。匿名希望(ジンバブエ、ハラレ)
たしかに問題です。
実際、あなたと同じように、自分の組織でこの手の機能不全を眺めてきた多くの人が、不満の声をあげています。それはIT部門が不当に忘れ去られ、危機が起きるまで無視されていることにとどまりません。それも十分問題ではありますが、もっと大きな、もっと厄介な問題が起こっています。多くの企業でCFOがラスプーチンのように陰から支配しているという問題です。
ラスプーチンを持ち出すのは少々いきすぎかもしれませんが、CFOが社内で過度の影響力を持ち、それを行使しているのは事実です。この種の過度の権力を持ち、財務に加えて人事や他のスタッフ部門も取り仕切っているのは、CFOでなければ、いわゆる「最高管理責任者(CAO)」です。
CAOは元CFOの場合もありますし、元法務責任者の場合もあります。いずれにしても、この余分な管理層は最悪の場合は官僚主義を生み出します。CFOとかCAOといった肩書を持つ人物は、社内の誰もがお伺いを立てねばならない存在になります。あらゆる質問や決定が、彼らのチェックを経て、初めてCEOのもとに届くのです。彼らは「負担過多の」CEOが忙しすぎて対処できないとされる事業や社員や部署のためのよろず引き受け所のような存在なのです。
これは実によくないことです。では、なぜそのようなことが起きるのか。
ITについては、説明は簡単で、これは昔の習慣の名残です。ITは当初、もっぱら給与計算のコスト削減と能率向上に役立つとみなされていました。当時(何十年も前ですが)、ITをCFOの指揮下に置くことはある程度、理にかなっていたのです。しかし、ほとんどの優良企業は、ITの幅広い戦略的効用が明らかになったとき、IT部門を財務部門から独立させました。
人事部がいわゆるCAOの指揮下に置かれることについては、納得のいく説明はつけられません。人材の採用・評価・開発にきわめて重要な役割を果たす人事部は会社の成功を左右する部署です。それをCEOの直属にしないのは犯罪といってもいいでしょう。人事部がCEOの直属でないとしたら、それはCEOが人事のことを理解していないためか、実際には別の人間が会社を動かしているためか、その両方かでしょう。
この仕組みはどんな弊害をもたらすか。まず、通常は会社で最も当を得たアイデアや情報を持っている現場の声が、トップにタイムリーに届きません。また、CFOやCAOが絶大な権力を握っている企業は、人事やITのトップの職に有能な人材を採用するのに、他の企業よりはるかに苦労します。
最初の質問に戻りますと、IT部門は絶対にCFOの下に置かれてはなりません。ITにかぎらず、主要な部門はいずれも官僚主義的な管理層の指揮下に置かれてはならないのです。