2008年4月、血管内治療から、またひとつ保険適用となった。「頸動脈狭窄症」に対するステント(金属製の網状の筒)治療である。

頸動脈狭窄症とは動脈硬化によって血管が狭くなる病気。頸動脈はあごの下の左右に走行し、手で押すように触れると拍動が伝わってくる。そのあたりが脳へ行く内頸動脈と顔面などへ行く外頸動脈の分岐部で、狭窄症の起こりやすいところである。

そして、何より重要なのは、頸動脈狭窄症が日本人の死亡原因疾患第3位の脳卒中と大きく関係するからで、その75%を占める脳梗塞患者の15~20%を占めていると推測されている。患者数は約20万人。

脳梗塞との関係は、頸動脈狭窄症の部分が詰まるというより、その病巣部で血栓ができたり、病巣が崩れたりして、それらが先にとんで脳血管に詰まることが多い。いわゆる脳梗塞の中の脳塞栓という状態。詰まる場所によって運動まひ、知覚障害、言語障害などの症状がでてくる。この頸動脈狭窄症をしっかり治療すれば、脳梗塞のリスクはグンと減らせる。

頸動脈狭窄症は頸動脈エコー(超音波)検査で、狭窄の程度から動脈硬化の性状までも診断がつく。

中等度以上になると薬物治療に入り、60%以上狭窄のある重度になると「外科治療(CEA)」が脳梗塞を防ぐには断然有効である。保険適用となった血管内治療「頸動脈ステント留置術(CAS)」は、手術以上に有効性の高いことが米国での多施設無作為比較試験で明らかになっている。

手術適応の患者をCEA群167例、CAS群167例で比較。1年後の有害事象(死亡、脳梗塞、心筋梗塞)はCEAが20.1%に対し、CASは12.2%。実質的にはCASのほうがはるかに有効とわかったのである。

血管内治療のCASは次のように行われる。まず、脚の付け根の動脈からカテーテル(細い管)を挿入し、頸動脈の狭窄部をバルーン(風船)で押し広げ、ステントを留置して血流を改善する治療法である。ただ、これだけでは治療中に血栓がその先の脳血管へとぶ危険性がある。その危険を抑えるために、CASには特別なフィルター「アンジオガードXP」が付いている。

狭窄部をバルーンで押し広げる前に、脳側へフィルターが先に送り込まれ、あたかも傘のようにフィルターが開く。血流を止めずに血栓などの塞栓物質をとらえるために、ポリウレタン製のフィルターには100マイクロメートルの孔が数多くあいている。フィルターは治療終了時に折り畳んで回収する。

保険適用となったことで、ますますCASを受ける患者が増えるのは確実。ただし、CASを行おうにも、カテーテルを病巣に通せないと治療はできない。適応条件を知り、最良の治療法を選択すべきである。

【生活習慣のワンポイント】

頸動脈狭窄症は動脈硬化が原因の血管病なので、生活習慣を改善するのが予防に大きく貢献する。

・禁煙しよう!
 たばこは動脈硬化を促進させる要因。

・メタボを治そう!
 メタボ健診といわれる特定健診で「動機づけ支援」「積極的支援」グループに入った人は、医師や保健師、管理栄養士の保健指導を受けて、改善に積極的に取り組むべきである。指導のあるほうが、1人で努力するより効果的である。この指導は食事、運動が中心になっている。

・積極的に水分を摂取しよう!
 食事以外に1日2リットルの水分を補給する。お茶やコーヒーが入ってもかまわないが、アルコールは量の中にはカウントしない。

・適正な睡眠をとろう!
 睡眠不足も睡眠過多も生活習慣病を悪化させる。6~8時間が適正な睡眠。

・ストレスを解消しよう!
 自分なりのストレス発散法を。