痛みは辛い。それも原因不明の痛みとなると、なおのこと辛い。全身のあちらこちらの筋肉や関節に痛みが生じる「線維筋痛症」は、まさにそれである。
痛みの度合いは個人差が大きく、重症のケースとなると、体にちょっと触れただけでもとびあがるほどである。そうなると日常生活や仕事にも支障をきたしてしまう。
線維筋痛症は環境や状況の変化、心理的ストレスに影響を受ける心身症(ストレスが原因で身体疾患を起こす病気の総称)の側面を持っている病気。そのため、さまざまな合併症状が起こる。
症状としては、「睡眠障害」「頭痛」「下痢」「月経異常」「抑うつ、苛立ち、焦燥感、気力減退」など。
眠っているときには誰でも意識することなく寝返りをうつ。そのとき激痛が全身を走る。これでは眠ったかなと思うと激痛で起こされ、不眠症に陥ってしまう。
頭痛は、まさに痛みが痛みを呼ぶといった形で起こりやすい。また、痛みのストレスが下痢を引き起こす。女性の場合は月経困難症を起こす人も多い。
抑うつ、苛立ちなどの精神症状は、更年期障害とよく似ている部分も多い。が、原因がわからないだけに不安は増幅していく。それだけに、まずは正しい診断が重要である。
線維筋痛症は原因不明の痛みが3カ月以上続く。痛い個所は炎症を起こしているのではなく、むしろ冷たいのが特徴的である。アメリカの診断基準に合わせ、全身18カ所の圧痛ポイントのうち、押すと11カ所以上が痛い場合、線維筋痛症と診断される。圧痛ポイントを押すときは、約4キロの強度で押す。
その一方で、血液検査、X線検査、MRI検査を行い、原因を特定するが、器質的異常がないと、より線維筋痛症が疑われる。ただし、器質的疾患が発見されたとしても、それに線維筋痛症が合併していることもあるので、十分な注意が必要である。
患者は83%が女性で、年齢的には50代をピークにして10代から80代と大きな幅がある。推定患者数は約200万人で、実際に治療を受けている人は約15万人と推定される。別名「心因性リウマチ」といわれるこの病気の治療法には「薬物療法」と「生活指導」がある。
薬物療法では、痛みの個所に炎症が起きているのではないため、「抗うつ薬」「抗けいれん薬」「漢方薬」が処方される。抗うつ薬は痛みを抑え、落ち込んだ気分を亢進させる。重症のケースでは「SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)」や「SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)」が中心となる。抗けいれん薬は痛い個所の冷えの改善に結びつく。そして、漢方薬は自律神経のバランスの改善に使用されている。
【生活習慣のワンポイント】
生活指導は「生活習慣」の中でしっかり行う必要がある。認知行動療法などで医師と一緒に治療にはげみ、リラクセーションは家庭で――。
(1)呼吸法やマッサージを!
呼吸法を身につけるとリラクセーションに大きく結びつくし、気持ちがいいと思えるマッサージを受けるのもいい。
(2)運動をしよう!
運動を行うときは、反動をつける運動はよくない。体操は反動をつけるので痛みを引き起こしてしまう。ゆったりとした動きの太極拳、気功がお勧めである。ヨガを行うのもいい。
(3)お風呂にゆっくり入ろう!
痛い個所は冷えているので、お風呂にゆっくり入って体を温める。38度くらいのお風呂に半身浴。この方法であれば体の芯から温まるはずである。