整形外科関連の疾患は、QOL(生活の質)が極めて悪くなる場合が多い。変形性股関節症は股関節の関節軟骨がすり減り、腰から尻、ひざにかけてのジワッとした痛みに苦しめられる。
特徴的な症状は「座っていて立ちあがるときに痛い」「あぐらをかきにくい」「脚が開かない」「歩き始めに痛い」というように関節の動きに制限が出てくる。
さらに進むと「足の爪が切れない」「靴下がはけない」といった状態に――。
ただし、痛みは進行度合いとは関係ないことが多く、進行していても痛みがないケースもある。
股関節は人間の体の中で最も大きな関節で骨盤と脚をつないでいる。脚の付け根が大だい腿たい骨で、その最先端部分は骨こっとう頭といって球形をしている。この骨頭部分が骨盤のくぼみに入り込み、そのくぼみの上部に臼きゅうがい蓋という屋根があって外れないようになっている。関節と関節は表面にある軟骨によりスムーズな動きが行われている。
ところが、軟骨がすり減ることから変形が始まり、次第に骨が硬くなる。こうなると、激痛で歩けないほどの痛さに。さらに悪化すると骨が固まって動けなくなってしまう。
軟骨がすり減るのは、臼蓋形成不全がほとんど。本来、大腿骨の先端部分を包み込んでいる臼蓋が、十分に形成されておらず、適合が悪くなるのである。何枚も重ねたおむつや、ペルテス病、最近では高齢化が原因になるケースもある。しかし紙おむつの普及やライフスタイルの欧米化で疾患自体は減少している。
治療には「保存療法」と「手術」がある。
保存療法では「薬物療法」「食生活の改善」「運動療法」「温熱療法」などが行われる。「薬物療法」で簡単に痛みをとってしまうと、今まで以上に体を動かし、病状が悪化することもあるので注意が必要だ。
手術には「骨切り術」と「人工股関節置換術」がある。40代くらいまでの比較的若い人には骨切り術が選択される。包み込む形になっていない臼蓋を、骨を切って屋根をつくり、包み込む形をつくるのである。手術した骨がしっかりしてくると、ごく一般的な歩行ができるようになり、もちろん痛みも消える。
一方、人工股関節置換術は60代が最もよいとされる。股関節部分を人工関節に置き換えるもので、材料は受ける部分が硬質プラスチック製で、骨頭部分はメタルが最も一般的である。
骨切り術か、それとも人工股関節置換術か。悩む場合は主治医と十分に話し合い、それぞれのメリット、デメリットを知り、納得したうえで決定すべきである。
【生活習慣のワンポイント】
保存療法で行われる「食生活の改善」と「運動療法」を知っておくと、変形性股関節症の予防、治療に役立つ。
(1)食生活の改善
体重の重い人は軽い人よりも股関節の変形が早いことがわかっている。股関節には全体重がかかるので、肥満の人はしっかりダイエットを行って少しでも体重を減らし、股関節への負荷を少なくしたい――。
その場合、1品ダイエットといった偏ったものではなく、3食バランスのいい食事を摂り、腹七~八分に抑えると、無理のないダイエットが可能となる。
(2)運動療法
ハードな運動や重い物を持って行う運動、階段の上り下りも股関節に負担がかかるので、避けたほうがよい。
運動ならウオーキングがお勧めである。1日30分、余力のある人は40~50分。バランスよく筋肉をつける。けっして筋肉質にする必要はない。
さらに水中ウオーキングなら、水中の浮力が股関節への負担を軽くするので、治療として行うのであれば最適である。