「動くと膝が痛い」。この症状を訴える多くの人に変形性膝しつ関節症の疑いがある。動作を起こす最初だけ痛みがあり、歩き続けているうちに痛みが収まってくることもある。このほか、膝が「立ち上がろうとするときに痛む」「階段を下りるときに痛む」「歩きだすと痛む」などの症状が出る。

これが重症になってくると「安静時にも膝が腫れたり、痛みが出る」ようになり、「膝に水がたまる」ようになる。そのうちに膝の曲げ伸ばしも思うようにできなくなり、QOL(生活の質)がすこぶる悪くなってしまう。

中高年以降に発症がみられる変形性膝関節症は、男女の比率は1対4で女性に多い。そのため「筋力の弱さ」や「女性ホルモンとの関係」などが原因としてあがっているものの、確実ではない。はっきりしているのは、変形性膝関節症は老化が大きな要素、ということである。膝関節は、体の中で最大の骨である大腿骨と脛骨を結ぶ関節で、2つの骨が直接ぶつからず、スムーズな動きができるように各先端部は関節軟骨でできている。

軟骨が年をとることで磨り減ってくると、体が反応して余分な骨の骨棘(こつきょく)ができる。こうなるとツルツルしていた関節面がでこぼこになり、動くと痛みが生じるのである。さらに、関節を包んでいる関節包も軟骨のカケラなどで刺激を受け、炎症を起こし、水がたまることになる。

関節に痛みが出る関節リウマチなどとの識別がしっかり行われ、診断がつくと、治療方針が決められる。

治療は「保存療法」と「手術療法」。

保存療法では「筋力トレーニング」「サポーター」「足底板」「薬物療法」などを行う。ただし、軟骨を再生することはできないので、あくまで対症療法となる。

あまりにもQOLが悪くなると手術をすることになる。手術には「鏡視下手術」「高位脛骨骨切り術」「人工膝関節置換術」の3つの方法がある。

半月板が断裂したり、軟骨が剥がれ、それが関節に挟まって痛みが出るようなケースでは鏡視下手術が効果を発揮する。内視鏡を用いる手術で、モニターを見ながら行う。

膝関節を悪化させるのがO脚。O脚は膝の内側の関節軟骨を磨り減らし、内側に体重がかかるので、よりO脚も悪化する――。

この悪循環を断つには、すねの脛骨の上部を切ってO脚を矯正する高位脛骨骨切り術がある。人工物が入らないので感染の心配がない。

骨を削って膝関節を置き換えるのが人工膝関節置換術。膝関節の下の脛骨側はプラスチック、上の大腿骨側は金属にするのが一般的である。人工関節の素材や手術方法が進歩し、以前は人工関節の寿命は10~15年といわれたが、今日では入れ替える必要がない。

【生活習慣のワンポイント】

保存療法の「筋力トレーニング」「足底板」を普段から行い、肥満に気をつけることで変形性膝関節症は、先送りできたり、予防することができる。

(1)筋力トレーニング

膝関節の軟骨は、膝の関節を支えている大腿四頭筋が弱くなると、軟骨の磨り減りは、より激しくなる。そこで、 大腿四頭筋の強化トレーニングを行う。椅子に腰掛け、片方の脚を少し浮かす。10秒行ったら次はもう片方の脚。5回ずつ行う。これを1日5回。継続は力なり、だ。そのほか、膝に負担の少ない方法としてバタ足のスイミングや水中ウオーキングがお勧めである。

(2)足底板

膝関節の内側だけが磨り減っているケースが多く、O脚を生む悪循環に陥る――。靴の中敷で外側が厚くなっているものを足底板という。医師と相談して作ってもらう。

(3)肥満予防

太っていると膝への負担が大きくなる。減量を心がけることが大切である。