いつもと同じ朝なのに、今朝は何か違う。耳が詰まった感じがして耳鳴りもする。寝起きだからと思っていたが、朝食後も同じ状態が続いていた。そのまま出社――。

オフィスの席に着くと、電話が鳴った。受話器を取って挨拶をしたものの、相手の声が聞こえない。変だなあ!? と思い受話器を振ってみたものの、そんなことで聞こえるはずもない。次に受話器を左手に持ち替え、左の耳にあてて聞いてみた。すると、相手の声がはっきり聞こえるではないか。

これが、多くの人にみられる突発性難聴発症時の様子である。突発性難聴は、ある日突然、片方の耳が聞こえにくくなる病気。脳動脈瘤が破裂して起こるくも膜下出血では、頭痛がいつ起きたか患者ははっきり覚えているが、突発性難聴の場合も、患者は発症時をはっきり覚えている。

多くの人は耳鳴りを伴う。重症のケースでは激しいめまいも伴い、嘔吐してしまうこともある。めまいを合併するケースは約30%といわれている。

患者は子供から高齢者までと幅広いものの、最も多い年齢層は40代と50代。この年代は働き盛りで仕事に重い責任を持たされているからと思われる。

突発性難聴は、原因不明の難聴。だから、検査で原因が明らかになると、突発性難聴から除外される。

原因不明とはいうものの、耳の奥にあって、音を司る内耳に原因があるだろうということが判明している。中でも、有力な説として2つの原因が考えられている。

(1)ウイルス感染説……聴神経や内耳がウイルスに感染しても、免疫力が強く抵抗力のあるときは問題はない。免疫力が低下したときにウイルスが活動して炎症を起こし難聴になる。

(2)内耳血液循環障害説……内耳に栄養・酸素を送る血液の流れが悪くなり難聴に。そのため、“耳の心筋梗塞”と考えられている。

このような説が有力なため、治療はそれにそったものとなっている。

免疫力低下がウイルスの活性化を招いたのなら、まずは、安静が第一。次に炎症を抑えるためにステロイド薬、血液の循環を良くするとともに血液の凝固を防ぐ循環改善薬と抗凝固薬の投与。血管が狭くなっていることも考えられるので血管拡張薬。さらに、振動を電気信号に変えるかたつむりの殻のような形の蝸牛内にリンパ液がたまりすぎているという考えから利尿薬。そのほか、ビタミン薬や代謝賦活薬も使われる。

治療の開始が早いほど回復の可能性が高いので、発症後一週間以内に入院して安静を保つべきである。

【生活習慣のワンポイント】

(1)免疫力を低下させない!

 十分な睡眠(1日7~8時間)をとり、風邪などひかないように注意する。免疫力が低下すると水ぼうそうのウイルスが再活性化して帯状疱疹を引き起こす。バランスの良い食事を規則正しく摂り、適度な運動を心がける。

(2)動脈硬化予防に努める!

動脈硬化を引き起こす原因として注目されているのは、メタボリックシンドローム。“メタボ”を改善するためには、“おなかで食べず、脳で食べる”を実践すべきである。腹いっぱいにしないと満足できないのでは悪循環に突入してしまう。バランスの良い食事を頭で考え、誰もが美味しいと思う食事を摂る。美味しい物は少しの量で脳が満足してくれるので、食べすぎが予防でき、メタボ改善に結びつくのである。