年間死亡者数が約9万5000人。死亡原因で4番目に多いのが、肺炎である。肺炎というと、市中肺炎を思い描く人が多いが、その場合、肺での炎症は肺の最先端部の肺胞の内側に起こる。
今回取りあげる「間質性肺炎」は、肺胞の内側ではなく、肺胞を取り囲んでいる壁(間質)に炎症が起きる。さらに、市中肺炎が細菌感染であるのに対し、間質性肺炎はアレルギーなどさまざまな原因で起き、その点でも疾患が大きく異なる。
間質性肺炎でも、原因がわからないものは「特発性間質性肺炎」と呼ぶ。原因がわかっているものとしては、鉱物の粉を長期間にわたって吸い続けたことによる「じん肺」。アスベスト(石綿)のみならず陶器、石材などによってもじん肺を引き起こす。薬剤が原因の場合は「薬剤性肺炎」、放射線治療が原因の場合は「放射線肺炎」、カビや鳥などにアレルギー反応を起こすのが「過敏性肺炎」、特に家の中のカビに反応するのが「夏型過敏性肺炎」である。
精密検査で原因を追究し、原因がしっかり特定されればよりよい対応策を取ることができる。しかし、原因が特定できない特発性間質性肺炎が約20~40%程度を占めている。
間質性肺炎は酸素と二酸化炭素とのガス交換を行う肺胞の壁(間質)に炎症が起き、修復過程で線維化して呼吸困難へと進む。線維化すると元に戻らないため、それが進むと肺全体が線維化し、死に至ってしまう。急性に悪化するタイプもあれば、慢性化するタイプもある。
特有の症状に、「労作時の息切れ」「乾いた咳」「ばち状指」「チアノーゼ」がある――。
まずは、症状から状態をしっかり診察し、徹底した原因追究を行うのが治癒へのポイントとなる。
過敏性肺炎であれば、カビが原因のときはカビから、鳥が原因のときは鳥から患者を離せば、病状悪化は抑えられる。
経過を観察し、それでも症状の悪化が抑えられないときは、ステロイド(副腎皮質ホルモン)薬を使う。ステロイド薬の「プレドニゾロン」から使い始め、効果が不十分なときはステロイド薬「メチルプレドニゾロン」のセミパルス療法を行う。
セミパルス療法はメチルプレドニゾロン500mgの1日1回点滴静注を3日間行う治療法である。そして、プレドニゾロン減量中に再び症状が悪化するようなときは、免疫抑制剤のシクロスポリンを併用する。現在、シクロスポリンは保険適用になっていないので、自由診療となる。
間質性肺炎では、その原因を正確に特定できるか否かが、治療を大きく左右するといって間違いない。
【生活習慣のワンポイント】
間質性肺炎の場合、原因を徹底してさがしだすのが重要で、その対象物から隔離すれば解決する。前述したようにさまざまな物に反応する。
●アスベスト
アスベストとは石綿のこと。天然の鉱物繊維である。この繊維を吸い込むと20~30年後に肺の線維化、悪性中皮腫、肺ガンなどを引き起こす。ビルの解体業の人の場合、アスベストによる間質性肺炎が考えられる。また、運転手をしていて、自分で自動車のブレーキを直していた人たちも、アスベストが原因と考えられる。
●カビ
夏型過敏性肺炎。家の水まわりの腐った木のカビである「トリコスポロン」を吸い込むことが原因となる。
●ハトなど
野鳥のハトなどの鳥のほかに羽毛布団にも反応して過敏性肺炎の「鳥とり飼がい病」を引き起こす。
●その他
薬、放射線、陶器製作、石工作なども原因となる。生活の総点検が必要である。