「五十肩」「四十肩」といった病名はご存じだろう。ある日突然、肩関節に痛みが走ったり、腕が思うように動かないといった症状が起きる。それを機に、これまで普通にできていた動作ができなくなる。

あなたは、肩周辺の痛みや不調をほうっておいてはいないだろうか。

以下の10項目中、3項目以上に該当すると、五十肩と思って間違いない。

(1)左右の肩の形(高さなど)が違う。
 (2)肩甲骨がスムーズに動かない。
 (3)肩が重くだるく感じる。
 (4)肩を動かすとときどき痛い。
 (5)背中など以前は手が届いていたところに届かなくなった。
 (6)肩に痛みがあって動かない。
 (7)ジッとしていても肩が痛い。
 (8)肩のみならず腕まで痛い。
 (9)夜、肩の痛みでなかなか眠れない。
 (10)眠っていても肩の痛みで起きてしまう。

該当項目が多いと重症。

とくに(6)から(10)に該当する人は専門医を受診すべきである。

五十肩は40代、50代の人々に多く発症するのでその病名があるが、正式には「肩関節周囲炎」。“ほうっておいても半年、長くても1年もすると治る”などといわれるが、それは正しくはない。

五十肩は加齢変化、老化に伴う肩関節周囲の不調、炎症が原因。基本的には自然治癒は起こらない。が、なぜそういわれているかというと、老化部分に合わせるように他の部分の機能が低下し、バランスを取り直すからである。

つまり、人間の体は組織を守ろうと肩を上手に使うことを学習し、痛くならないように肩を使うからである。この治り方は老化部分に合わせているだけで、若々しさを保つ治り方とはいえない。

専門医を受診し、前向きに治療すべきである。その治療は「安静」「薬物療法」「運動療法」が3本柱。

◯安静 激しい痛みのときは安静が第1。三角巾を使って肩患部を固定し、左右の肩の高さを平行にして力を抜いていると、関節組織に加わる機械的刺激は極力減らせる。
 ◯薬物療法 安静とともに肩関節の炎症を抑える「消炎鎮静剤」を内服したり、患部に「ステロイド薬」を注射する。注射薬としては「ヒアルロン酸ナトリウム薬」も使われる。
 ◯運動療法 痛みが和らいできた段階で運動療法を始める。その基本はリラクセーション。肩関節周辺の筋肉から力をすっかり抜いて、肩関節を慢性的ストレス状態から解放するのである。

たとえば、腕をダラッとおとしてその腕の重みを感じるのがポイント。これだけで肩関節や筋肉が伸び、内側の筋肉であるインナーマッスルが自然と収縮する。

腱板に断裂などが起きていることも原因としてあるので、腱板にパワーをつける必要がある。トレーニングはテーブルに肘をつける姿勢で座り、肘を支点に腕を左右にゆっくり水平移動する「テーブル拭きトレーニング」が効果がある。

もちろん、関節は全身の運動の連鎖で影響を受けるので、肩以外の腰、膝などのストレッチが間接的に良い結果をもたらすこともある。

【生活習慣のワンポイント】

五十肩の名称から、若いときは大丈夫と思い込んでいる人が多いが、20代でも発症する。20代など若い人の場合、プロスポーツ選手のように特殊な肩の使い方、鍛え方をしていると起きてしまう。

それを防ぐためには、日常生活の中で以下の6点をしっかり実行すると、五十肩予防に結びつくといわれている。

(1)荷物は両方の手に、それぞれ平行に持つ。
 (2)手作業は手前で、肘の高さで行う。
 (3)掃除機やモップを使うときは、腕より足を先に出す。
 (4)ものを書くときは、背筋の伸びた姿勢で行う。
 (5)パソコンを使うときは、手前に腕のおける台を用意する。
 (6)物を取ったり持ち上げたりするときは、上半身や腕だけで行わず、腰を入れる。