ナンパ塾をめぐる連続レイプ事件、小学生女子向け書籍の「モテ」テク指南……。弁護士の太田啓子さんが、これらの中から、多くの男女がとらわれている「モテ」の呪縛と勘違い、そしてその背景にある差別意識について探ります。

※本稿は太田啓子『これからの男の子たちへ「男らしさ」から自由になるためのレッスン』(大月書店)の一部を再編集したものです。

人形のビジネスマン
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非モテ男性の「自分たちが割を食っている」という思い込み

安定した職業と異性関係、その帰結としての「幸せな家庭」……高度成長の時代なら、ある程度「普通」の男性であれば望むことができた成功のモデルが、低成長の時代には希少なパイになり、そこからこぼれ落ちる男性が出てきます。男性どうしのヒエラルキーの中で「勝者」になれなかった自分たち、という自意識が、ネットスラングでいうところの「弱者男性」や「非モテ」といった自虐的な自己表現にあらわれるのでしょう。そういう自虐的な表現で自分のことを認識している男性のすべてが、女性に対して攻撃的なわけではもちろんないでしょうが、自分の「男はつらいよ」という意識、鬱屈を「女性が優遇されているせいで自分たちが割を食っている」という反感に結びつけてしまうと、明らかにこれは有害です。

ほんとうに自分を苦しめているのは女性ではなく、性差別社会における「有害な男らしさ」の呪縛だ、ということが往々にしてあると思います。自分の生きづらさを女性叩きでごまかさず、ほんとうの原因を見極めて「有害な男らしさ」の呪いを解けたら、いまより救われる男性は多いのではと思います。