弁護士の太田啓子さんは、仕事で関わった離婚やセクハラ・性暴力の案件などの中で、女性を下に見ないではいられない「有害な男らしさ」の呪縛にとらわれた男性を多く見てきました。なぜ彼らは、こうした呪縛から逃れられないのでしょうか。
※本稿は太田啓子『これからの男の子たちへ「男らしさ」から自由になるためのレッスン』(大月書店)の一部を再編集したものです。
男子の権力抗争は幼児期から始まっている
「有害な男らしさ」と「ホモソーシャル」、このふたつのキーワードを念頭に置くと、男の子の育ちにおけるさまざまな問題を、よりクリアに見ることができるようになります。
片田孫朝日さんという、現在は灘中学校・高等学校の先生をされている方が、学童保育でのフィールドワークを通じて、低学年の子どもたちの遊び方やふるまいをつぶさに観察し分析した『男子の権力』(京都大学学術出版会)という本があります(この本については、『これからの男の子たちへ「男らしさ」から自由になるためのレッスン』で対談した小学校教師の星野俊樹さんに教えていただきました)。
そこから見えるのは、小学1、2年生、あるいは保育園・幼稚園の時代から、男の子のあいだには「有害な男らしさ」や「ホモソーシャル」の萌芽がすでにあるということです。集団の中で、男子どうしで勝ち負けを競って序列関係をつくったり、女子の遊びを邪魔したりといった行動を通じて「男子」としての優位性を築き上げ、互いの序列を確認するといったことが観察されています。