「そろそろ欲張りすぎないことも必要かも」
2014年、8年間のパラレルワークを経てリクルートを退職し、事業に専念することにした。そのきっかけとなったのは、娘の出産だった。
「『三足のわらじ』にしようかどうか悩みました。娘と過ごす時間も大切にしたい、欲張りすぎないこともたまには必要なんじゃないかと思い、創業時、二足のわらじをすすめてくれた上司のところに、退職の報告に行きました。そうしたら『辞めてもいいんじゃない』と」
会社を辞めるまでのパラレルキャリアの8年間を振り返って、苦労らしい苦労はなかったと星田さんは言う。
「会社の給料があるので、圧倒的に気持ちは楽でした。失敗しても、路頭に迷うことはないわけですから、ひたすらカスタマーのニーズに応えればいいだけなんです。『どれぐらいの金額なら洋服を作りたいと思うかな』『どんなふうに作るとワクワクするかな』と、カスタマーにフォーカスした商品づくりができた。それで、これなら口コミで広がるという確信が持てました」
起業当初は1人だったスタッフも、現在は5人になり、10人を超える外部のパートナーもいる。コロナ禍はフィットミーにも大きな打撃を与えたが、「新型コロナで、前と同じ売り上げがあげられなかったのは、スタッフのせいではなく私のせい。だから『業績が下がったから給料を下げる』ということはしない、と決めました。いざとなったら、私が外で働いてスタッフにお給料をきちんとお支払しますよ」とからりと笑う。苦労を苦労と思わない、頼れる“肝っ玉母ちゃん”の姿を見せた。
(構成=池田純子)