ポテトサラダは居酒屋の定番メニューだ。その存在はどちらかといえば脇役だったが、最近は主役に据える居酒屋が増えている。ライターの石田哲大氏は「そうしたポテサラには、外食店でしか味わえない創意工夫が見てとれる」という――。
ポテトサラダ
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「自分で作るポテサラ」が現れた

ちまたの居酒屋のポテトサラダ(以下、ポテサラ)がおもしろいことになっている。燻製ポテサラ、焼きポテサラ、さらには焼いた肉やベーコンの塊をのせたり、フォアグラ入りだったりと、最近のポテサラはじつに多彩で、百花繚乱の様相だ。極めつきは串カツチェーン「串カツ田中」の自分でつくるポテサラ。器にはふかしたジャガイモとゆで卵、マヨネーズなどが入っているだけ。添えられている小さなすりこぎを使って、お客が自分で材料をつぶし混ぜるという趣向だ。

筆者にとってのポテサラとは、刺身や焼きもの、揚げものといったほかのメニューが届くまでの“つなぎ”や“箸休め”で、脇役という認識だった。それが、ここ数年に新規オープンした居酒屋では、ポテサラに創意工夫が施されて主役級の役割を担っていることがよくある。

いぶりがっこ入り、酒粕入り、温かい状態で提供…

以下、最近おもしろいと思ったポテサラの具体例を列挙する。ウナギとジビエに特化した居酒屋「新宿寅箱」(東京・新宿)の「献上節のポテトサラダ」、クラフトビール専門店を大衆酒場業態に落とし込んだ「居酒屋ビールボーイ」(同・吉祥寺。2020年7月19日に営業を終了)の「いぶりがっことカラスミのポテサラ」、日本酒専門の立ち飲み居酒屋「日本酒 室 MURO」(同・浜松町)の「自家製沢庵と竹葉酒粕のポテサラ」。

これらは、定番のポテサラにプラスアルファの材料を加えた“足し算”のポテサラといえる。昔ながらのポテサラはしみじみとおいしいものだが、パンチには乏しい。だから、うま味を補強したり、食感に変化をつけたりすることで、食べ手の印象に残るように仕立てているわけだ。

気の利いた日本酒のセレクトとつまみが売りの「月肴」(同・四谷三丁目)の「温かいポテサラ」や炉端焼きと日本酒が売りの「燗アガリ」(同・新宿)の「できたてあったかポテトサラダ」のように、出来合いであることが普通であるポテサラのあり様を逆手に取って、あえてツーオーダーで出来立てのポテサラを提供している店もある。これがポテサラなのか? という疑問はさておくとして、キャッチーであることは間違いない。それに、おいしい。

※ここで紹介しているメニューは変更している可能性があります