日本の「電子政府」は名前倒れだ

日本政府もデジタル政府を掲げてはいる。2019年6月14日、「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」を閣議決定した。その中で、これまでのIT戦略の歩みについてこう述べている。

「政府CIOがIT政策の統括者となり、府省庁の縦割りを打破して『横串』を通すことにより、政府情報システムの運用コストの削減やデータ利活用の促進など、着実な成果を積み重ねてきている」

成果が出ていると「自画自賛」しているのだ。だが、全世帯にマスクを配ることも、一律10万円を配ることも各省縦割りの対応で、猛烈に時間がかかっている。「電子政府」は名前倒れだ。

ちなみに政府CIO(最高情報責任者)の正式な日本語名称は「内閣情報通信政策監」。官僚トップである内閣官房副長官の半格下の高級ポストである。台湾のタン氏と同じ役割を日本の政府CIOも期待されている。

「5000円」で国民はマイナンバーカードに飛びつくのか

さすがに官僚では無理で、民間人から登用した。現在は大林組の元専務で、情報システム担当などを務めた三輪昭尚氏が就任している。だが、台湾のタン氏は現在39歳だが、三輪氏は68歳だ。また、政府CIOの下に、各省庁のCIO(情報化統括責任者)が置かれているが、これは役人として出世してきたそれぞれの省の幹部官僚が兼務している。ITに詳しいわけでもなく、パソコンをどれぐらい使いこなせるかも分からない。

結局は、政府内にITの専門知識を持った人たちがおらず、外部から任用された人たちも官僚組織の中では権限が与えられない。各省庁別の巨額のIT予算には「ITゼネコン」と呼ばれる企業が結びつき、横割りで統合することを難しくしている。「マイナンバーのシステムは一から作り直した方が早いかもしれない」と新興のシステム企業の創業者は言う。それほど、マイナンバーカードは問題山積なのだ。

総務省は9月から、マイナンバーカードを持っている人だけが還元を受けられる「マイナポイント」キャンペーンを始める。「最大25%還元」がうたい文句だが、上限は5000円だ。要は5000円を販促費にマイナンバーカード普及を目論んでいるのだ。果たして国民は、5000円分のポイント還元で、便利とは言えないマイナンバーカードに飛びつくのか。カネで釣れると思っているところにも、国民をなめている霞が関官僚たちの顔がちらつく。

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