「課税しよう」という下心がミエミエ

政府は「便利さ」を強調するものの、国民は政府の本当の狙いをうすうす感じている。それもマイナンバーカードが普及しない理由だ。「便利だ」と言いながら、実のところ、収入や財産を把握して課税しようという下心がミエミエだと、国民の多くが見透かしているのだ。国に財布の中味まで知られたら、どんな不利益を将来被らないとも限らない、と多くの人が考えている。

マイナンバー制度の導入は政府にとって長年の悲願だった。国民に番号を与えることは、長い間、国民を管理するための「国民総背番号制」として批判され続けてきた。今や、コンピューターやインターネットが普及し、様々な取引でID(認証番号)が使われるのが普通になっているので、国民の番号に対するアレルギーは時代とともに薄れた。マイナンバー制度の導入が実現したのもそうした国民の意識の変化がある。

だが、その番号がどう使われるかについては、国民はいまだ疑心暗鬼なのだ。

国からサービスを受けるためなら使うはずだが…

本来は国からサービスを受ける場合に必要な番号にすれば、そのサービスを受けたい国民は必ず番号を使う。そのために「便利」ならばカードを作るはずだ。米国では社会保障番号が生活に必要不可欠の番号として普及している。社会保障番号を他人に知られたらマズいということにはなっておらず、日々、使われている。

ところが日本の場合、そうしたサービスにマイナンバーはほとんど関連づけられていない。年金を受け取る場合にカードが必要となれば、まずは年金生活者には100%カードが行き渡るはずだ。健康保険証についても同じだ。確定申告など税務申告に当たっても納税者番号とは別にマイナンバーの記載とコピーの提出が求められるが、それがどう利用されるのか国民はなかなか分からない。

政府はようやく、マイナンバーカードを健康保険証として利用できるように変えるという。2021年3月からの実施を目指している。だが、世の中の健康保険証を全てマイナンバーカードに一体化するのではなく、健康保険証も今まで通り使えることになりそうだ。

しかも、「人には知られてはいけない」ということで、病院の窓口では職員が番号部分を見ないようにすることなどが議論されている。もともと金庫にしまってあるマイナンバーカードでは、誰も健康保険証代わりに使おうとは思わない。