「運転免許証」のほうが気軽で便利
またしても「マイナンバー」を巡る政府の思惑が大きく外れたようだ。
新型コロナの蔓延に伴う経済対策として政府が国民に一律10万円を支給する「特別定額給付金」。この申請にマイナンバーを使うことで、一気にマイナンバーカードが普及すると期待がかけられた。
ところが結果は散々。マイナンバーを使った申請で、各地の自治体でトラブルが相次ぎ、結局、郵送での受付が主流になったのだ。「やはりマイナンバーは使えない」。そんな印象を強く国民に刻み込む、むしろ逆の結果になった。
全人口に占めるマイナンバーカードの発行枚数、いわゆる普及率は未だに16%と低迷している。マイナンバーが導入されたのは2016年だから、4年たってこの有様なのだ。なぜ、こんなに普及しないのだろうか。
政府は導入にあたって、「便利さ」を強調した。身分証明書になる、コンビニで住民票がとれる、といった感じだ。だが、残念ながら、それぐらいでは国民に「便利さ」を感じさせることはできていない。身分証明書ならば運転免許証の方が気軽で便利だし、住民票などそう頻繁に取るものでもない。
持っていると「厄介なカード」になってしまった
一方で、政府はマイナンバーの導入時点で大きな失敗をした。番号を絶対に流出させてはいけない「秘密」だとしたのだ。本来、マイナンバーを利用してもらうには、誰に伝えても問題が起きない気軽な番号にすべきだったのだが、「第三者に知られてはいけない」という強迫観念が真っ先に植え付けられた。
勤務先などに提出する際にわざわざシステム会社などに簡易書留でコピーを送らせるなど、煩雑な手続きを経験して、ますます番号を知られてはいけないのだ、と国民は思ったわけだ。最近は番号を収集する企業側の管理を厳格にしているだけで、個人が番号を知られても特段大きな問題は起きない、と言い始めている。だが、時すでに遅し。仮にカードの発行を受けても、持ち歩かずに金庫にしまっているといった話をよく聞く。
つまり、マイナンバーカードを持っていると断然便利、あるいは、持っていないと不便という話にならないのだ。だから、わざわざ時間をかけて不要なカードを作る必要はない、ということになってしまう。そもそも財布の中は様々なカードでいっぱいだから、余計なカードは作りたくないし、紛失する恐れもあるから、そんな厄介なカードは持ちたくない、ということになる。