題名からは子供向けの印象を受けるが、本当のターゲットは違う。
「実は大人に読んでもらいたい。この本を読んだ大人が自分の子供たちに勧めてくれたら最高です」
なぜ勉強しなければならないのか。著者は自らの人生を振り返りながら、勉強の重要性を丁寧に説いていく。
数々のエピソードの中で印象的なのは、大学生のときのもの。父親との確執で著者は実家を飛び出し、学費と生活費をアルバイトで稼ぐため、週の大半をダンプの運転手として過ごす。転機となったのは、いつも行動をともにしていた先輩の「おまえは大学生なのに俺より勉強していない」という一言だった。
「人生で最大の衝撃でした。何よりショックだったのは、子供の頃から嫌っていた、努力をせずに文句ばかり言う大人に自分がなりかけていたことです。先輩には今でも感謝しています。他人のために、あえて厳しい言葉を投げかけるのは、なかなかできることではありません」
このときから、著者は英語の猛勉強を始める。休憩時間に運転手仲間が談笑している中、ダンプの中で英語のテープを聞き、英字新聞を読む日々。仲間には変わり者扱いされたが、独習を続け、貯金を手に渡米する。
「アメリカに行ってよかったことは考えるクセがついたことです。考えることは非常にエネルギーの要る行為。だからみんな避けて通る。しかし、私はろくに英語も話せずに外国に行ったため、嫌でも孤独に自分自身と向き合わなければならなかった」
異国の地での考え続ける日々は、真剣に人生を切り開く入り口となった。帰国後、新聞社に入社し、MBA留学、起業と人生は広がっていく。
「自分の成功を話す大人は多いけれど、失敗を語る人は少ない。人は往々にして格好をつけるし、読者も成功物語を読みたがるからです。しかし、実際は成功よりも失敗から学ぶことのほうがはるかに大きい。だから失敗談を書いて、私のような普通の人間でも、勉強し続ければ夢は実現することを伝えたかった。人は、いつからでも勉強することができるし、それは決して無駄にならないのです」
2007年の最も売れたビジネス本にもランキングされた『「1日30分」を続けなさい!』は50万部に迫る、息の長いベストセラーとなった。そちらが勉強を続けるための具体的なテクニックを紹介した実践編とすれば、こちらは勉強の必要性を説いたいわば基礎編。並行して読むのもお勧めだ。