「来年以降、20年間は冬の時代が訪れます」
日本一、『会社四季報』に名前が載っている個人投資家として有名な竹田和平さんによると、昨年のリーマンショックによる相場の暴落は、冬の訪れを告げる号砲だったという。
金融危機が実体経済に反映され、失業が顕在化し、犯罪が増え……、と実感されるようになるのは来年が本番と指摘する。
「今の体制を変えずになんとかしようと悪あがきをするが、どうにもならなくなって、ドンと節目がくる。80年前の世界恐慌のときには不幸なことに戦争をもって再興の足がかりにしました。そんなことにならないよう、きちんと歴史に学ぶべき」
冬の時代には、きたるべき春のために「徳を貯めよ」と竹田さんはいう。徳とは何か。
「澁澤栄一の『論語と算盤』にもありますが、算盤は経営、論語は私にいわせれば徳なんです。彼は明治期に何百もの会社をつくりましたが、とにかく人を見る目があった。ポイントは徳。社長を任せる人が親孝行かどうかも重視していたといいます」
これからの20年はその徳を貯めるため、今社会の中枢を担っている人たちが変化していくしかないのだという。
「十分に力を持った人が変化して新しい仕事に取り組んでいき、元の職場をほかの人に残してやらないといけない。そして金のある人は文化に投資し、消費していかなければならない。格差がいけないのではないんです。能力のある人が文化に金を使わず、新しい仕事に移っていかないことが問題なんです」
だから竹田さんは「文化を買え」という。手のかかる文化的な商品・サービスにお金が回ればそれだけ職場が増え、飯を食える人が増える。民間の力でどこまでできるか。今が日本の未来を決める瀬戸際だという。
最後に、数多の上場企業を見てきた竹田さんに成功する経営者の条件を聞いた。
「何十年も見ていれば否応なしに感じますよ(笑)。能力があっても気がしっかりしていなければダメ。もちろん気力だけでもダメですが。世のため人のためにやりたいという気概のある人が結果として成功しています。たとえ今うまくいっていなくても、きちんとやるべきことを宣言できる人であれば大丈夫です。
経営者は『明日をつくる』仕事。事業は社員がやってくれる。経営者は明日の事業をどうしていくかを考えなければ。先祖があって今の私たちがある。子孫のために種を蒔かずに何をするというのでしょう。キーワードは『ありがとう』。すべてに対する感謝の心です」