昨年は中国人80人が新たに「億万長者」入り

ちなみに、フォーブス誌7月号掲載の資産総額10億ドル以上の億万長者ランキング(2095人)には、世界20カ国から新たに中国人80人、米国人44人(日本人0人)を含む178人がランク入りした。上位10名は以下の通り。ITテクノロジー系が目立つほか、不振の目立つZARAや老舗ウォルマート一族が3人ランクインしている。

① ジェフ・ベゾス(米国、アマゾン創業者 56歳)1130億ドル(約12兆4300億円)
② ビル・ゲイツ(米国、マイクロソフト創業者 64歳)980億ドル(約10兆7800億円)
③ ベルナール・アルノー(仏、LVMH 71歳)760億ドル(約8兆3600億円)
④ ウォーレン・バフェット(米国、バークシャー・ハザウェイ代表 89歳)675億ドル(約7兆4250億円)
⑤ ラリー・エリソン(米国、オラクル・コーポレーション共同設立者 75歳)590億ドル(約6兆5000億円)
⑥ アマンシオ・オルテガ(スペイン、ZARA創業者 84歳)551億ドル(約6兆円)
⑦ マーク・ザッカーバーグ(米国、フェイスブック創業者 35歳)547億ドル(約6兆円)
⑧ ジム・ウォルトン(米国、ウォルマート創業者三男 71歳)546億ドル(約6兆円)
⑨ アリス・ウォルトン(米国、ウォルマート創業者長女 70歳)544億ドル(約6兆円)
⑩ ロブ・ウォルトン(米国、ウォルマート創業者長男 75歳)541億ドル(約6兆円)

(ドルベースの金額は3月18日時点)

日本市場で突然、高騰した“ズーム株”

この資産膨張の一因は、米連邦準備理事会(FRB)の異例の金融緩和策と、それにともなう米国株市場の高騰と思われる。とりわけ米ナスダック総合指数は急落した3月下旬からV字回復し史上最高値を更新、2000年前後のITバブル時の約2倍にまで達している。ナスダック市場ではアップル、フェイスブック、アマゾンはもちろん、巣ごもり需要増で盛り上がるネットフリックスなどが順調に株価を伸ばした。

同市場のズーム・ビデオ・コミュニケーション(Zoom Video Comunication)もそう。世界中の人々が“巣ごもり”を強いられる中、爆発的に需要を増やしたビデオコミュニケーションツール“ZOOM”を提供する。同社の創業者で中国系米国人のエリック・ユアンCEOは、自社株46%を含む資産総額を55億ドル(6050億円)とし、創業9年でフォーブス億万長者の292位にランクインを果たしているが、同社株は3月以降さらに急騰し、6月には年初の3倍超に。資本関係のない日本の音響機器メーカー、ズームの株式が間違って買われ、ストップ高をつける珍事まで引き起こしている(6月5日)。

米国株市場が活気づいたもう一つの背景には、4月に失業者2200万人超のサプライズで震撼させた米雇用統計が、5月には前月比250万9000人とこれまた予想外の戻しを見せたことがある。しかし、全米経済研究所が、コロナ禍とはまだ無縁の2月に米国経済が景気後退入りしていたことを確定しており、株式市場が本当に実体経済を反映しているとは、にわかには信じ難い。