新型コロナウイルス感染症対応の最前線に立っているのは、地域の保健所だ。感染が疑われたときの問い合わせ先も保健所である。なぜ病院ではなく保健所なのか。大分県立看護科学大学の村嶋幸代学長が解説する——。
新型コロナウイルスの電話相談対応に追われる保健所職員ら[東京都港区提供]=2020年4月8日
写真=時事通信フォト
新型コロナウイルスの電話相談対応に追われる保健所職員ら[東京都港区提供]=2020年4月8日

なぜ保健所が窓口となっているのか

新型コロナウイルス感染症が、世界の人々の生命と暮らし(公衆衛生)を脅かしている。

熱が出て、「自分が、新型コロナウイルス感染症にかかってしまったのではないか?」と心配になった時、最初に連絡するのは居住地の保健所とされている。保健所経由で、専門の医療機関につなげるのが標準である。

では、なぜ、窓口が保健所なのだろうか? それは、保健所が、公衆衛生の最前線の機関だからである。

公衆衛生は、公衆(人々・私たち)の生命と生活(暮らし)をまもることである。日本国憲法は、その25条で「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と述べ、それに続けて、第2項に、「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」としている。