「国―都道府県庁―保健所」がつながって力を発揮する

また、保健所保健師は、難病患者や看取みとりケア等に必要な在宅医療を推進するために、地域の多様な機関(市町村、病院・診療所・訪問看護ステーション・介護事業所・地域包括支援センター、学校、健康保険組合、各種の専門職集団)とのネットワークを、日頃から強化している。管内の中小規模病院の看護管理者支援や、事業所を支援して壮年期からの健康づくりを進める(健康経営)など、地域に網目のようにネットワークを張り巡らしている。感染症に関しても、地域の病院に勤める感染管理認定看護師等と日頃から顔の見える関係を築いており、いざというときに協働できる。

さらに、都道府県保健所の保健師は、数年ごとに保健所と都道府県庁等を異動する。担当する業務や勤務地域が変わることによって、各自が経験を積むとともに、県庁等とのパイプが太くなり、「国―都道府県庁―保健所」のラインがつながって、機動力を発揮する。このように重層的に張り巡らされたネットワークによって、国民の健康がまもられている。

新型コロナ対応ではどんな活動をしているか

では、今回の新型コロナウイルス感染症に対して、保健所保健師は、どのような活動をしているのだろうか。

1)住民からの相談への対応と感染者の発見

相談として多いのは不安・心配等であるが、重要なことは、感染者を逃さないことである。発熱や咳などの症状がある人が電話してきた場合には、呼吸器症状と行動歴、渡航状況等を聞き取り、新型コロナウイルス感染症者と濃厚接触した者等の基準に該当する場合には、所定の医療機関につなげる。感染症の症状と行動歴を一人ひとりから聞き取り分析する手法は、戦後の結核対策時代から保健師に脈々と培われてきており、平時でも集団感染に対応してきたため技術が蓄積されている。帰国者・接触者相談センターとしての電話対応は24時間行うため、夜間は保健師が交代で電話当番することもある。

PCR検査実施の判断と検体採取は医師が行うが、必要時介助と、PCR検査調査票を用いて本人の行動歴・職業、同居者の行動歴、経過と症状、肺炎の状況等に関して聞き取り、感染者の発見と迅速な対応に努める。

陽性患者を隔離し、接触状況や行動履歴を聞き取る

2)PCR検査で陽性となり、感染が判明した場合

①陽性と判定された人に対しては、指定医療機関に連絡し入院させる、もしくは、症状により適切な場所に隔離をする。陰性になるまでフォローアップし、都道府県庁に報告する。これが厚生労働省に報告され、日本の発生件数となる。
②感染経路をたどるために、積極的疫学調査を行う。2週間前まで遡って感染者が一緒に行動した者・同居者等との接触状況を聞き取り、濃厚接触者を割り出し、PCR検査につなげる。

3)濃厚接触者の健康観察

濃厚接触者でPCR陰性者については、その健康状態を2週間にわたり観察を続ける。