この4月から小学校で英語が必修化された。授業を先取りして幼少期から子どもに英会話を習わせるべきなのか。心理学博士の榎本博明氏は、「脳が著しい発達を示す幼少期には、まず日本語をしっかり習得させるのが先だ。思考の道具としての日本語をきちんと身につけないと、学校の授業についていけなくなる」という――。
※本稿は、榎本博明『伸びる子どもは○○がすごい』(日経プレミアシリーズ)の一部を再編集したものです。
ますます高まる親たちの英語熱
電車に乗ると、英会話と脱毛の広告ばかりが目立つ。
大学入試で英語力が重視されるようになることや、小学校で英語が正規科目になったこともあり、その動きを先取りした英会話塾などによる宣伝文句に煽られ、わが子に英会話を習わそうとする親たちの英語熱がますます高まっている。
ただし、そうした子どもビジネスあるいは英会話ビジネスの宣伝文句に乗せられると痛い目に遭う可能性があるので、注意が必要だ。
なぜかと言えば、英語教育の専門家の間では、早く始めた方が英語ができるようになるというのは幻想に過ぎず、母語をきちんと習得してからの方が、英語も効果的に習得できるとされているからである。それゆえ、同時通訳の第一人者である鳥飼玖美子氏など英語教育の専門家の多くは、小学校から英語を学ばせることに反対の姿勢を取ってきた。
認知心理学の観点からしても、母語体系が習得できていることで初めて、それをもとに外国語がうまく習得できると考えられる。