父親は子育てに参加しているといっても、「お風呂に入れる」と「遊び相手をする」ばかりで、実質的には役に立たないという批判がある。心理学博士の榎本博明氏は、「父親が子どもと遊ぶことにはとても意義がある。子どもはそれによって社会性を身につける」という――。
※本稿は、榎本博明『伸びる子どもは○○がすごい』(日経プレミアシリーズ)の一部を再編集したものです。
遊び相手ばかりする父親は批判されがちだが…
私は職業柄、自分の時間配分をわりと自由にできる立場にあったため、夕方や休日に子どもを連れ出すだけでなく、子連れ出勤や子連れ出張もするなど、父親としてかなり子育てに携わったものだが、すでに父親になる前から『仕事で忙しいお父さんのための 夫婦・親子の心理学』(日本実業出版社)という父親の子育て参加を推奨する本を書いていた。
それは、不登校・家庭内暴力の子どもの相手をしたり、教員を目指している学生たちと不登校・家庭内暴力をはじめとする子どもの不適応について話し合ったりしている中で、母子密着・父親の心理的不在により家庭に母性が溢れている現状に対して、父性の注入の必要性を感じていたからだ。だが、今から30年も前のことであり、父親の子育て参加を推進する力にはなれなかった。
今では子育てに参加する父親も増えているが、実際に父親がどのような形で子育てに関わっているかというと、「お風呂に入れる」と「遊び相手をする」が圧倒的に多い。このような実態に対して、父親は子育てに参加しているといっても、遊び相手ばかりで、実質的に役に立たないなどといった批判がなされることがある。
そのような批判をする人は、大切なことを見逃している。それは、非認知能力の発達にとって遊びが非常に重要な役割を担っているということだ。