就学後の学習の先取りとして、乳幼児期から読み書きや計算を学ばせる「早期教育」に取り組む親が増えている。心理学博士の榎本博明氏は、「わけもわからずに知識を与えられる早期教育は、自ら学ぶ意欲を削ぐ。幼い頃に伸び伸びと遊べないことで、人間関係力が身につかないおそれもある」という――。
※本稿は、榎本博明『伸びる子どもは○○がすごい』(日経プレミアシリーズ)の一部を再編集したものです。
親の不安を煽る早期教育の業者たち
早期教育全盛の時代である。多くの子どもたちが、学習塾や何らかの習い事に通っている。すでに小学校に入る前から、週に3日も4日も塾や習い事に通う子も珍しくない。
わが子のしつけや教育について真剣に考える親の中には、こんなに幼い頃から学習塾に通わせたり習い事に通わせたりしてよいものだろうか、もっと自由に遊ぶ時間をもたせるべきなのではないかと疑問を抱く人もいるはずだ。実際、そのような相談を受けることもある。
だが、周囲の子どもたちが学習塾や習い事に通っているのをみると、後れをとったら大変だと不安になり、心の中に疑問を抱えつつも通わせてしまう。
子どもビジネスを標榜する業者の側も、あの手この手を使って世の親たちを早期教育に駆り立てようとする。わが子を早期教育に通わせて良かったといった体験談を発信したり、だれもが通わせているように匂わす記事を発信したりする。そうした情報が溢れているため、よほどの信念をもっていない限り、早期教育を拒否することはできない。
さらには、心理学者や教育学者、脳科学者などの話を引き合いに出し、早いうちから知的刺激を与えておかないと取り返しがつかないことになるといった感じに不安を煽る。